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  卒業生の生き方

 

サドベリー教育の中で子ども時代を過ごした生徒達は、社会に出てどのような人生を送っているのでしょうか。
こちらのページでは、『サドベリースクールを巣立った生徒達がどのような進路に進むのか』と共に、『どのように生きているのか』をお伝えしております。

 

なお、こちらのページは、1968年に設立されたSudbury Valley School(サドベリー・バレー・スクール:アメリカ)の卒業生を対象にアンケート調査を行い、まとめた書籍「The Pursuit of Happiness- The lives of sudbury valley alumni(直訳:幸福への追求)/2005年発売・邦訳なし(※1)」や、サドベリー・バレー・スクールのスタッフや保護者へのインタビュー、また実際に東京サドベリースクールでの出来事を元に、サドベリー教育で育った生徒達が人生をどのように切り開いていくのかをグラフ(※2)などを使い、お伝えしています(※3)。
 

(※1)対象者は17歳以前に入学し、3年以上在籍した生徒のうち119名。62名は男性、57名は女性。また
21歳から49歳の卒業生に実施。
(※2)グラフ左側の縦軸の数字は、人数を表しています。
(※3)日本ではまだまだサドベリースクールの卒業生が少ないため、サドベリー・バレー・スクールの卒業生を
主にご紹介しています。日本の卒業生が多くなり、彼ら彼女らが適切な年齢になったときに調査をし、ま
とめることも検討しています。



まずはサドベリースクールの卒業生 ジェニーンムアーさんの動画をご覧ください。





それでは、卒業生の「人生に対する満足度調査」の結果をご覧ください。

  人生に対する満足度

 

サドベリースクールの卒業生は、自身の人生に対してどのくらい満足しているのでしょうか。

グラフの通り、半数以上の卒業生が「はい(満足している)」と回答し、全回答者中60%の卒業生が現在の人生に満足していると答えています。
また、「まあまあ満足(25%)」と答えた方と合計すると、全体の85%の卒業生が人生に対して満足しているという結果が出ています。
彼らはサドベリースクールを卒業し、社会で生活し、子どもを育てている方々です。
アメリカでも一般的な教育として認識されていないサドベリー教育で育った彼らは、どのようにして社会で生活しているのか。
実際に社会に出てみて、何を感じているのか。
またサドベリースクールで学んでいたと感じたことは何だったのか。
そしてなぜ、サドベリー・バレー・スクールの卒業生は上記の通り、人生に対して高い満足感を持っているのでしょうか。
次に、サドベリースクールでの生徒の1日の様子をご覧ください。

  サドベリースクールの日常 ~東京サドベリースクールの1日より~

 

朝、スクールがオープンして少しずつ生徒達が集まってきます。チェックイン(学校に来たサイン)をした後は、各自思いのまま過ごします。
スクール内にある掲示板を確認する生徒や、おもむろにゲームを始める生徒。
友達と約束していた木登りを始める生徒もいます。
楽しそうに話をしている生徒もいれば、白熱した話し合いが行われていることもあります。
おや?あちらではやりたいことがことがなくて「ひまだ〜ひまだ〜」と言いながらスクール内をウロウロしている生徒も。
お昼時になり料理をしている生徒がいたかと思えば、朝からお弁当を食べてお腹が「ぐ~」。どうしよう?という男子生徒もいます。
午後は女子生徒達が仲良く映画を見ていたと思ったら、そこから違う事に興味を持ち、絵を描いたり、パソコンをしたり。
歌とピアノのレッスンをしている生徒もいますね。スクールの楽器や音楽に関する資金集めをかねた、不定期に行っている今度のスクールコンサートの練習のようです。
ミーティング(話し合いの場)にて、必死に自分のやりたいことを実現できるよう気持ちを伝える生徒もいれば、公園に体を動かしに行く生徒、一人静かに読書をする生徒もいます。
日々、色々なことが生徒の興味に応じて繰り広げられ、それぞれに自分のストーリーが展開されています。
そのことについて、サドベリー・バレー・スクールの卒業生は、
「この学校は自分自身を満足させてくれる学校だった」
と語っています。
サドベリースクールはカリキュラムや時間割もなく、動機付けをされることもない場所です。自分で活動を見つけ出し、0から1を創り出す必要のあるスクールであり、またその1を10に発展させることもできる場所です。もちろん、やってみたがあまり興味が湧かず、1のまま終わらせる事もしょっちゅう。
ただ、自分の才能を発見する事もスクールの校則を新たに作る事も、まずは自分が動かなければ生み出せません。そして出た芽も、自らが育てないと大きくはならないのです。
サドベリースクールは他人から一方的に指示を与えられません。そこでは、誰かから与えられる満足とは遠い感じを受けるかもしれません。
しかし、この学校では「条件なしに自分らしくいられる」ということが生徒達にとっての最大の満足であるようです。
では「自分らしくいられる」場所で「自分らしさ」を大切にしていった卒業生達は、スクールで何を学び、卒業後どのように人生を切り開いていくのでしょうか。

  卒業生へのインタビュー

 

サドベリー教育では、卒業のタイミングも自分で決めます。
多くのサドベリースクールでは、自らがスクールでの学びを終えたと判断したときに卒業論文を書き、生徒やスタッフ(時には保護者も)に発表してそのスクールの卒業生として認められたとき、正式に卒業となります。
サドベリー・バレー・スクール卒業生のBaz・Harrigan(バズ・ハリガン(以下敬称略))さんは、10才で入学し、9年間の在籍の後、卒業しました。
そして、卒業後に彼が日本を訪れた際、東京サドベリースクールにもお招きし、インタビューを行いました。

自分らしさへの探求を経て卒業へ

Q :アメリカのサドベリー・バレー・スクールでは、卒業する時期を自分で決めることが出来ますね。9年間通って、どうして卒業を決めたのですか?
バズ:セルフイメージが確立したからです。つまり、自分はどういう人でいたいか、どういう事をしたいのか、そしてしたくないのかが確立したからです。

 

Q :どのように確立していったのですか?

 

バズ:世界中にある色々な出来事に対して、自分がどう反応するのかをよく観察しました。また、他の人がどう判断したかと言うことを考えました。そして、どういう事が自分にとって一番良い反応だったのかということを考えました。それを日常的にしていくことで、自分がどういう人間かを少しずつ作り上げました。

 

等身大の自分を理解することが自己評価になる

Q  :サドベリー教育の中で自己評価はどのように培われますか?

 

バズ:自分が何かをやり遂げ、それが良いものだ!と思えたときです。自己評価は、自分を大きく見せるとか、誰かに良い評価をもらうと言うより、自分をどれだけ理解できるかと言うこと。自分に出来ることと出来ないことを把握することが、自分に対して満足感を感じることになると思います。
Q :成績表がありませんが、自分の位置を確認したりするものが必要ではないのですか?
バズ:人がつける成績を通して自己評価を得るという考えは必要ないと思います。
サドベリーモデルの教育では、自分のやりたいことが出来ます。自分に対する評価は、外からではなく、自分の中から感じること、作り上げられるものです。
サドベリー教育は、テストも成績表もありません。あらゆる活動は、そのコミュニティーの他の人々の権利を侵害しない限り、その人にとって今必要な学びをしているとされ、その活動が尊重されます。そのため、「良い・悪い」という「評価」を誰からもされることのない環境の中、生徒たちは自然と自分で自分自身を見つめることを体験し学んでいきます。

 

全て自由ではない社会にどう適応するか

Q :サドベリー・バレー・スクールでは自主性を重んじて、自由に過ごせますが、一般の社会で全部自由にならない事があり、嫌なこともしないといけない場面もありますよね。そのような時、サドベリースクールを卒業した生徒達はどのように対応するのですか?
バズ:卒業生は本当に色々な事をしています。職業も様々です。生きていくためには時には嫌なこともしなければいけなくて、それは、小さな子どもの頃からやらないと身につかないと多くの人が思っているようですが、僕自身の観察からの感想では、一般的な学校に通っている子どもは、勉強の回避術を身につけていると思います。それに反して、サドベリーの卒業生は、仕事をどうやったらこなせるのか?完結できるのか?という能力に長けているように思えます。ですから、小さな頃から嫌なこともする訓練が必要なわけではないと思います。

(バズ・ハリガンさんへのインタビューより)

 

以上、人に対する深い洞察と観察力が感じられたバズ・ハリガンさん。これらはご自身の力とご家庭の教育と共に、9年間の学校生活で誰に評価されることなく自分らしさを探求し、自己を確立してきたからこそなのではないかと思います。
では、サドベリー・バレー・スクールを卒業した後の進路について、生徒たちはどのようにとらえているのでしょうか。
創設者の一人であるDaniel Greenberg(以下ダニエル・グリーンバーグ)氏の著『世界一素敵な学校』には、このように書かれています。
「卒業生の特徴として、人を見下す傲慢さが見られないということがあります。
サドベリースクールでは異年齢がミックスされており、スタッフも生徒も対等に学校で過ごします。進路についても対等です。例えば大学進学が一番で、次が専門的な訓練を受ける生徒、就職組はあまり良くないという区別はありません。」
“自分らしく生きる”ということを追求できる環境で過ごした生徒たちは、卒業後の進路についても自分らしい選択を行い、その全てに同等の価値があると捉えているようです。
では、卒業後に働くことを選択した生徒たちについて見ていきましょう。

  自分を売り込んで、やりたい仕事に就く

 

サドベリースクールの卒業生たちが仕事に就く時、彼らはそれをどのように見つけるのでしょうか。
アンケートに応じた半数近くの卒業生が、「そう感じたから(直感)」と答えています。続いて自分の売り込みをしたと答えた卒業生が30%以上にのぼりました。ここでは、“自分を売り込んで職を得た”という卒業生のストーリーを抜粋してご紹介します。

卒業生の話より

 

「サドベリー・バレー・スクールで音楽をつくること以外の楽しみは、料理の上手で大好きなスタッフと一緒にいることでした。子どもの頃、母の苦手だった料理をそのスタッフから教えてもらいました。数年後、彼女から教えてもらった料理をすることとなったのです。
そしてある日突然、レストランをオープンしようと思いました。レストランの支配人をしている友人に相談したところ、彼が、
「レストランを開くには、まずシェフとしての経験が必要だよ。シェフのなり方を知っていれば、君は好きなだけレストランのオーナーになれるよ。しかしシェフというものを知らなければ、君は雇ったシェフに動かされることとなるよ」
と言われました。私は、
「シェフのなり方は十分知っているよ」
と答えました。すると彼は、
「台所で料理する程度ではなくて、サービスという形での料理や厨房で働く人たちをどうやって取りまとめるかを学ぶ必要があるんだ」
と言いました。
さっそく友人の働いているホテルに履歴書を送り、そこで働くこととなりました。」
そのホテルから仕事をスタートした彼は、ボストンからロサンゼルス、ビバリーヒルズなど、いくつかの有名なホテルにてシェフとしての技術を身につけていきました。
ホテルシェフとして10年働き、とても充実していると語っていました。
また25%の卒業生は「様々な職業の見習いから仕事を始めた」と答えています。その他、興味のある分野の仕事をボランティアから始めて仕事にしたというケースも多いとのことです。
東京サドベリースクールの生徒も、小さく始めてみる事の大切さを知っています。
いきなり大きく始めるよりも、まずは小さくやってみる。もっとやりたければ、もう少し大きな事にチャレンジします。そのまま関心が続けばどんどん学び続けますし、満足すればそこで本人に取っての学びは終了。新しい事を見つけるサイクルに戻ります。

  サドベリー・バレー・スクールの卒業生に多い職業

 

ここで、サドベリー・バレー・スクールを卒業した生徒の職業をご紹介しましょう。
グラフでは、アメリカ平均(緑色)と比較しています。

グラフから下記のことが見て取れます。
芸術関係や教育関連、マネージメント(経営職・管理職)といった仕事をする比率が、アメリカ平均と比較して高い
●芸術関係が多い理由は、個性が尊重される環境で「自分らしさ」を追求した結果として、芸術のように独自性を発揮できる場を求めたと考えられます。
●教育関連が多い理由は、自身がサドベリー教育というユニークな教育に関わってきたため、教育に関心が向かいやすかったと考えられます
●マネージメント(経営職・管理職)が多い理由としては、何もない環境で自らのやりたい事を仲間を募って共に始めたり、スクールのミーティング(公的な話し合い)に提案して活動をしてきた経験があるためと考えられます
また、アメリカ平均と同じように事務職や営業といった仕事をする方も多くなっています

  「情熱」「才能」を職業選択の基準にする

 

では、卒業生たちがその職業を選んだ基準について見ていきましょう。


このグラフから、多くの卒業生は「情熱」が持てることを仕事にしていることが見て取れます。
また、自らの才能を発見し、その「才能に合っている」仕事を選ぶ方も多くなっています。
卒業生達は、自分が何に情熱を持っているのか、また自分の才能は何かがわかっているようです。
「他者へ奉仕できること」を基準に挙げている卒業生の割合も高くなっています。ある卒業生は、
「私はいつも人と一緒に働き、助けることがしたいと思っていました。」
と答えていました。
そして、選択項目に「安定性」「権威・ステータス」「報酬」などの基準にする項目が入っていないのも注目されるポイントです。
もちろんそれらのいくつかは生活に必要ですが、必ずしも優先順位の上位ではないようです。

情熱をもてる活動

学校生活で自分が何に情熱を持てるかを発見し、その後の人生でも追求している卒業生が多いようです。
ここで、サドベリー・バレー・スクールのスタッフであり、2人の子どもを通わせた親でもあるMickel(マイケル)氏のインタビューをご紹介しましょう。
Q  :サドベリー・バレー・スクールを卒業したお子様について教えてください。
Mickel:子ども達は長年、スクールミーティング(学校の運営やルールなどを大きな話し合いの場)に参加していたので、自分のしたいことをするには、どういう表現で説得すればいいか、本当にしっかり学びました。特に娘は、やりたいことをなんでもやらせてもらえるように持って行く方法を色々見つけてやっています。20才を過ぎた二人は、世の中で自分の刻印を残せるように、色々な仕事に挑戦をしているようです。
次に、「進学」という選択をした学生について見ていきましょう。
サドベリー教育の生徒たちは、なんのために進学しているのでしょうか。

  より専門的な分野のプロを目指して進学する

 

サドベリー・バレー・スクールの卒業生の80%は4年生(6年生)大学や専門学校に進学しています。そのうち約20%が大学院まで進学し、学びを続けました。
なぜそのように大学や専門学校に進学する率が高いのかと、実際の卒業生に当校スタッフが質問をしたところ、「アメリカでは、18歳くらいで進学するのは自然な事だよ。日本でもそうでしょ?」と答えていました。この辺りは、日本の感覚と似ているのかもしれません。しかし、以下のグラフからサドベリー・バレー・スクールの卒業生たちは、専門的なキャリアに必要な深い知識を得て専門性を高めたり、何かに挑戦することを自らの進学の目標としている生徒が多いことが分かります。

下記の文章は、当校スタッフが、サドベリー・バレー・スクールを卒業し、当時大学に通っていた女性(先程の卒業生とは別の方)と会話をしていて印象に残った言葉です。
「大学は大きなサドベリーのようです。ここでは、自分のやりたい事や興味のある事をもっと知る事ができる。大学で知り合った友人達は授業がつまらないと言っているけれど、それは本当に自分で自分の道を選んでいないからかなと思う。私はやりたかったことが、今の大学で学べて毎日が楽しいです!」
一方で、「新しい人やネットワークのため」や「旅行のため」という、学業以外に関連する項目が低いのも特徴的です。これは、卒業後の進学は遊ぶためではなく、また自分を見つける為ではなく、自分がすでに興味のある分野へのより深い知識などを学ぶ為という認識からだと、実際の卒業生が語ってくれています。

あるいは、遊ぶことや自分を見つけることは、サドベリー・バレー・スクールでの生活で十分に経験したということなのかもしれません。また、「選択肢を増やす」「それ以外の方法が見つからない」「外部からの期待にこたえる」の項目も低く、卒業生の多くが学びたいことや進学の目的を明確に持ち、主体的に歩んでいることを示しています。
大学はひとつの選択肢ですが、このアンケートを受けた卒業生で進学に興味のあった方は、全員が進学していたそうです。そして、なにより実際の卒業生に話を聞いたところ、自分がやりたい分野へ進む学生が非常に多いとのこと(数字は不明だが、彼いわくほとんどの卒業生)。
また、大学や他の教育機関への進学者の80%以上が教育に対して「価値があった」と感じており、また、進学先での生活が有益であったという結果がでています。
では、卒業生たちは、進学をしてどのようなことが有益であったと感じたのでしょうか。

  進学をして有益だったこと

 


多くの卒業生が、進学において自らの興味の探究を深めていったようです。これは、進学前に多くの生徒が目指していた「より深い知識を得る」ことと一致している点でも興味深い結果です。
また、「興味を発見すること」よりも「興味のあることを深く学んだ」という答えが多いのも特徴的です。これは、卒業生たちが、サドベリーで好きなことややってみたいことにチャレンジするチャンスがあり、また好きなだけ追求できる環境の中で自分の興味を発見し、進学ではその分野を深めていくステップに入る生徒が多い、ということにつながっています。

  卒業生たちが困難へ挑戦するとき

 

ここで、卒業生たちがサドベリーでの生活でどのような力を培ってきたのかを見ていきましょう。ある卒業生は、学校生活についてこのように語っています。

 「学校生活はいつも忙しかったです。何かを選択する際はほとんどの場合、難しい事を選んで行っていました。すべては“一歩前へ進むこと”でした。停滞することは無く、全てが挑戦することでした。」

 

このようにサドベリー・バレー・スクールでは、ただ好きなことをするだけでなく、自ら進んで難しい事を選び、チャレンジする生徒が少なくありません。
それは、本人がそのことに興味があるからもっとやってみようとするためであり、好きなこと・興味のあることを前提に行っていると、周りから見ていて難しい事にチャレンジしているように見えたり、とても努力をしているように見える事も、本人は活動に没頭した集中状態(フローと呼ばれる状態)にあるので、自然に行っていることが多々あるためです。誰にでも、興味のあることをしていたら、あっという間に時間が過ぎていたという経験はあるのではないでしょうか。
実際に「えい!」と勇気を出してチャレンジをしていたりもするのですが、周りからはより高いレベルのことや、より難しい事に努力しているように見えるのです。本人はやりたいからやっているのですが。
(また余談ですが、より興味の度合いが高いと、勇気さえいらなくなります。年少の子どもが、「あのブランコ乗りたいな~でもなァ。。」などと考えず一直線にブランコに走り出すように。)
では、人生の困難にぶつかったとき、卒業生たちはどのように対処しているのでしょうか?

このグラフで2番目と3番目に多い回答の、 「信頼すること」「自分に自信をもつこと」はサドベリー教育で大切にしていることでもあります。
また、このテーマに対する卒業生のコメントもご紹介しましょう。
「すぐにあきらめてしまうのではなく、多くの決意をしてきました。」
「今現在が心地よい状況ではなくても、未来へつながっているのだと信頼して過ごしています。自分が正しいと思えることに対して、信じることと、行動を起こすこと、リスクを冒すことを大切にしています。」
また、困難にぶつかったときの対処の1番目として「粘り強さ」が最も多かったというのは、毎日自由なサドベリー教育からはイメージがしづらいかもしれません。
興味のあることや好きなことばかりしていては、めんどくさいことや、やるべきことをやらず、すぐにあきらめるようになるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
東京サドベリースクールは、一般的な学校のように掃除の時間があるのですが、この掃除時間も内容も、そもそも掃除をするのかということも、生徒とスタッフの話し合いで決められました。
もちろん掃除が好きな生徒ばかりではありません。大人と同じです。
しかし、自分達が参加し、決定権のある話し合いで決まった事なので、全員が掃除の約束を守っています。
どうしても変更したい生徒や掃除そのものをやりたくない生徒は、自ら変更したいと話し合いの場で発言し、変えられる権利があるので、皆の約束に“従わない”という手段ではなく、“自分にとっても皆にとっても望ましい形に変える”という手段が取れるのです。
きちんとした手順で変更されたのであれば、それが今後の約束となります。
この手続きはめんどくさいことではありますが、本当にやりたいのであればやりとげます。まさに「粘り強く」。
これが「興味のあることであれば、めんどくさいこともするし、あきらめずにやる」ということです。

では、興味のないことや、やる必要があるがやりたくないことはどうするか。好きなことをする中には、めんどくさいこともあります。それを「えい!」とやってしまうというのもひとつの手ですし、また、そのことに興味がある人や専門家にやってもらうという考え方もできます。
たとえば、日本の学校では、生徒が学校の掃除をしますが、海外の学校では外部の業者が掃除をしていたりします。また、掃除が好きな人(生徒や先生!)に任せるということもできるかもしれません。
自分が苦手な事も、いい意味でやらなくて良いようにクリエイティブに考えることができたら、それはそれで素晴らしいことだという考えです。
少しそれましたが、つまり人は、好きなことやそのことに関心があるからこそ、粘り強く続けることができるのです。
人生は時に何度も壁にぶつかるものです。
好きでもなく、関心がないことだったら、何度も壁にぶつかったときにそれらを受け止め、乗り越え続けることはできないでしょう。
自分が好きなことや、自分の人生を自分がしたいように生きるためだからこそ、粘り強く対処していけるのです。
何かに卓越するには10000時間の練習や訓練、経験が必要という調査結果(『Outlier』Malcolm Gladwell著)がありますが、作曲家のモーツァルトや野球のイチロー選手のように、ひとつの分野で結果を出すにはそのことへの興味と訓練が不可欠です。
やりたいことを続けるための気持ち、そして困難にぶつかったときの粘り強さは、本当にそれをやりたい、心ひかれるからこそ生まれると考えています。
そのためサドベリースクールでは、「自分が本当にそれをやりたいのか」を周りから問われ続けますし、自分でも直面し続けます。

  社会生活でのコミュニケーションについて

 

日本経済団体連合会(経団連)の「企業の採用選考時に重視する要素」の第1位は、2004年から毎年「コミュニケーション能力」となっています。
なぜ、コミュニケーションがそれほど大切とされているのか。
それは、私達の社会において、人間は人と人との間で生かされているからだと考えられます。
東京サドベリースクールでは、生徒たちが集まり、一日中話をしている様子がよく見られます。一見、何もしていないようにも見えますが、生徒はスタッフや異年齢の他の生徒たちと関わりながら、日頃の気軽な会話と、ミーティングや活動という真剣な話し合いにより、社会生活において大切な要素である、「他者とのコミュニケーション」を毎日“体験”から学んでいます。
また、コミュニケーションは他人との関係だけではありません。「自分自身とのコミュニケーション」も非常に大切です。自分との対話も一生続くためです。
さらに、コミュニケーションというのは、言葉のキャッチボールだけにとどまりません。語らずとも、一人の在り方が周りの人々に伝播(でんぱ)し、場を作るということがあります。一人のスタッフの気持ちの持ちようで、場に与える影響もあります。もちろん生徒も。
そのため、スタッフも保護者も、自分自身の在り方を常に問われ続けます。サドベリースクールは、子どもも大人も人生に直面せざるを得ない場所なのです。
卒業生のコメントをご覧ください。
「サドベリー・バレー・スクールで学んだことは、人生そのものでした。どうやって人とコミュニケーションするか、物事をどのように管理して遂行していくかなど、すべてのことをです。大人がすることを見たり、活動に参加することで学んでいきました。しかし、一番は他の生徒達から学びました。どうやって生きるのか?どのようにして物事は起こるのか?そういったことを一緒に学んでいきました。」
上記のような学校生活の中で、人間関係を築くコミュニケーション力を身につけていく生徒が多くなっています。
ではどの程度、卒業生は社会でのコミュニケーション力について、自分自身のことをわかっているのでしょうか。

このグラフから、卒業生の多くが周りの人と極めて友好的な人間関係を築けていると思っているようです。
このテーマに対する卒業生のコメントもご紹介しましょう。
「自分の伝えたいことを、毎回上手く伝えることはできていませんが、挑戦することが楽しいです。」
「コミュニケーションはとても大切なことの一つです。家族や友人、ビジネスにおいて、また知らない人との間でもです。」
「初めのうちはとても恥ずかしがり屋でもありますが、話が進むにつれてコミュニケーションが取りやすくなります。」

  卒業生が人生で楽しんでいること

 

では、そのような卒業生が人生で楽しんでいることは何でしょう。

人間関係

 

卒業生は、人生で楽しんでいることの最も多い回答として人間関係を挙げています。人間関係は悩みの多いものという印象が強いものですので、興味深い結果です。
人間関係について、ある卒業生はこのように語っています。
「人生を深く分かち合う友人たちを見つけることができたことは、本当に幸運だと思う。」

目標達成

多くの卒業生たちが、自分なりの目標を実現させていくことに楽しみを見出しているようです。
目標の実現に関して、ある卒業生のコメントをご紹介します。
「自分の人生において満足できないことについて、満足できるようにいつも挑戦しています。私は自分を含めてみんな間違いをすることがあると思います。しかし、私はその間違いをどのようにするか、違った方法を試すようにしています。満足いかないことを満足いくように、いろいろな方法を試してみます。」

  幸福感が人生のゴール

 


グラフの結果から分かる通り、最も多い回答は「幸せ」であることだと答えています。また「挑戦すること」も大切にしています。
幸せについて、ある卒業生のコメントをご紹介しましょう。
「私は今、とても幸せだと感じています。私は自分にとって正しいことをしていないときに、幸せだと思いません。それが自分の幸せの基準になっていて、もし自分が幸せでないと感じたら、その現状を変えようとします。」
卒業生は「幸せ」について、「自分を幸せでない状態に居続けさせることをしたくない」と語っています。
また、人生で挑戦することについてある卒業生はこのように答えています。
「チャレンジすることは、たくさんのことを経験すること。そして、いいことも悪いことも同じように人生の一部として経験することです。そして、それを避けないことがチャレンジだと思います。」
自分がより幸せだと思える環境を創りだすためにチャレンジし、実現をしていくようです。

  自分の人生を自分で決める

 


サドベリースクールの卒業生の多くは、人生を自分で決めることができる感覚を持っています。
それは、サドベリー・バレー・スクールに在籍している時から、誰かにコントロールされることなく、その日1日何をするのか、自分がどのように振る舞うのか、自分の感情とどう向き合うのかなど、自分で自分をコントロールせざるを得ない環境だったためです。

  あとがき

サドベリー教育の中で育った卒業生の、社会での実際の様子はいかがでしたでしょうか。
卒業生を調査し、声を聞くことで、サドベリー・バレー・スクールでは、自分に十分向き合う時間と環境があることが分かりました。そして、そこで生徒たちは自分を見つめ、誰かの指示や強制がない中で主体的に行動しています。その中でやりたいことのために必要な仲間を集めていきます。具体的な活動を、手探りしながらもそれらに取り組んでいます。
また自分と他人を尊重し、互いの違いを理解しようとしています。サドベリースクールは、コミュニティー(共同体・地域社会)です。皆でスクール(社会)の全てを共有しています。その場を話し合いで創り上げていきます。その中で必ず自分と他人の考え方の違いが見えてきます。だからこそ、とことん話し合ってお互いを理解し合うのです。
それゆえ、自由と自分勝手をはき違えず、コミュニティーという社会を保つことと、個人の権利を調和する必要があるのだということ。コミュニティーを大切にすることで、自分も心地よくその場にいられるということがわかってくるのです。
多くの卒業生は、簡単か難しいかで道を選ぶのではなく、自分がやりたいかやりたくないかで道を選ぶことで、自分らしく幸せで豊かな人生を歩んでいました。入学することを自分で決め、入学してからもスクールのあらゆることを決める1票の権利があることで、誰かのせいにすることはできません。だからこそ当事者意識や責任感が生まれるのです。それらは、大人になり社会で生きていくなかで大切なことです。もちろん、卒業する時期も、自分で決めています。
他者と比べる必要もありません。“ただ違う”だけです。人に合わせないと仲間はずれになるため人の目を気にするということは必要なく、それぞれが自分の気持ちに素直になり、自分の道を歩めばよいという考えです。そのため、他人と比べて「自分はできていない。ダメなんだ。」と思う必要もありません。「ただ、できていないだけ。」それだけなのです。事実に感情をのせる必要はありません。自己も他者も否定する必要もありません。
いじめのない学校と言われていますが、サドベリー教育は尊重し合う場であり、伝えること・聞くことを大切にしています。人と人とが関わるので、すれ違いやもめ事はもちろんありますが、話し合い理解し合うために必要なタイミングがきます。また子ども・大人関係なく、“人として”考えるようにしています。
学校説明会でよく頂くご質問の1つに「サドベリーを出て本当に社会で生きていけるの?」というご質問があります。
制度の面については、特に学校の籍についての質問を多くいただきます。
サドベリー・バレー・スクールは、現在マサチューセッツ州で学校として認められており、卒業をすると州の卒業証明が出ます。
日本では、サドベリー教育のような多様な教育が学校として認められていないため、学校籍は学区の小学校・中学校の校長先生や教育委員会との話し合いによります。また、学校籍が地域の小学校・中学校に置かれない場合で進学する際や、中学校や高校の卒業認定が必要な際は、中学校卒業程度認定試験高等学校卒業程度認定試験に合格する必要があります。
また、人間性についてはどうでしょう。
このページで卒業生の考え方などに触れてきましたが、サドベリースクールの卒業生が、皆同じような考え方というわけではありません。多くの日本人が同じ教育を受けていますが、多種多様な人がいるのを見れば明らかですね。
しかし、そのようなサドベリー教育のなかで育っている生徒にも共通している項目があります。例えば、「自発性」「コミュニケーション」「信頼感」「自己肯定」「創造性」などです。
これらは、1968年から何十年と続くサドベリー・バレー・スクールも、2009年からスタートした東京サドベリースクールも共通しています。
サドベリー・バレー・スクールの生徒達は、学びの形は個人によって違っても、「自分らしさ」を追求し、世の中に表現することを学び、確信出来たときに、卒業を決めています。

冒頭でもご紹介したように、東京サドベリースクールや日本のサドベリースクールでは、まだ卒業生の人数が十分とはいえないため、こちらのページでは世界で最も長くサドベリー教育を行っているサドベリー・バレー・スクールの、“卒業生のその後”にフォーカスしてご紹介してまいりました。

「サドベリーを出て本当に社会で生きていけるの?」という問いの答えは、以下の通りです。
コミュニケーション能力と自発性があり、自分のやりたいことがあって、人間関係を楽しんでいる。そして、幸せを基準にしており、困難にぶつかったときに粘り強さを発揮する人が、社会で生きていけないとは考えづらくないでしょうか。
もちろん、全てが備わっているわけではないでしょうが、このような傾向にあるということは言えそうです。
最後に、ある卒業生のコメントをご紹介しましょう。
“今の時点では人生に満足しています。しかし、完全にではなく、まだこれから新しいことに挑戦していきたいとも思っています。

自分らしく、幸せに心豊かに生きていく子どもたちの場所、それがサドベリースクールであると考えています。

  参考資料

[書籍]
『Free at last』 Daniel Greenberg
『starting a Sudbury school』 Daniel Greenberg
『The pursuit of Happiness』Daniel Greenberg,Mimsy Sadofsky and Jason Lempka
『世界一素敵な学校』Daniel Greenberg著 大沼安史 訳
『Outlier』Malcolm Gladwell著
[刊行物]
『Journal』 Sudbury Valley School
[ウェブサイト]
サドベリー・バレー・スクール ホームページ
内閣府 平成17年度国民生活選好度調査

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