杉山まさる
sugiyama masaru
ファウンダー・代表理事
子ども時代だからこそ、自分の人生を自分でつくる経験を
私を教育の道に導いてくれたのは、いつも私を信じて応援してくれた両親です。両親は私を含む子ども3人が「こうしたい」という真剣な想いをいつも応援してくれました。当時はまだ父親が学校に関わることが珍しい時代でしたが、クラスで父だけが授業参観に来てくれていましたし、部活動にも応援に来てくれていました。音楽の授業が苦手だった私に母は「あぁこの曲いいな、好きだなぁ、と思えればそれでいいんだよ」と話してくれていました。歌も楽器も苦手だった私はよく赤点を取っていましたが、おかげで今でも音楽が好きです。
私は子ども時代、いつもどこかで自分と日本の学校教育への違和感を感じていました。陸上競技という好きなことをし、また友達、先生に恵まれ学校そのものは好きでしたが、どうしてもあの教科の勉強に興味を持てませんでした。それらが私に当時合わなかっただけで否定するつもりはありませんが、そのためか「先生にだけはならない」と考えていました。今思えばそれだけ教育に対しての想いもあったのだと思います。
大人になって、自分はそれまで周りの人の承認を得ることを無意識にしていたことに気づき、自分のしたいことが分からなくなりました。なぜこの仕事をしているのか意義を見出せなくなり家にこもっていたこともありましたが、その頃本屋で「色々な生き方がある」と書かれた本と偶然出会いました。そして自分のしたいことを見つけるために様々な仕事やボランティアをする中で、子どもが好きだったことを思い出し、子どもの仕事を始めました。
そんなある日、偶然テレビでアメリカのサドベリーバレースクールのことを知り、すぐに見学に伺わせていただきました。2度ほどうまくいかないこともありましたが、その数年後である2009年に東京サドベリースクールを始めることができました。それまで「学校つくることなんて本当にできるのか?」「無理じゃない?」と何度も何十人にも言われてきましたが、自分を信じてきて本当に良かったと思っています。
東京サドベリースクールでは、個人の自由な活動が保証されていて、自分の人生についてじっくりたっぷり気づき考え行動することができます。同時に、民主主義社会で必要なあらゆることに生徒にも1票が与えられています。両者とも、社会で必要な根源的な力ですので、どんな時代や環境でも活きる根っこのようなものとなっています。生徒達にはこれらをたくさん経験し、興味のあることを自由に探し追及することや、自分が社会の一員として生きることへのチャレンジをしてほしい。そして人生の基盤である自分の人生を自分でつくる経験を、たくさんしてほしいと思っています。
京都大学私学経営アカデミー
日本教育学会会員
教育コラム:https://note.com/sugiyamamasaru
加藤あや香
kato ayaka
スタッフ
大好きなことをやり続けることが、自分と周りの幸せにつながっているのだと実感しています
幼少期から健康と人の心に興味を持ち、大学では健康心理学を学びました。その後、保育園や福祉施設などで、カラーセラピスト・アートセラピストとして、子どもの色彩カウンセリングや心の成長と向き合う活動を行いました。
東京サドベリースクールで、生徒達が自分自身を大切にしながら、社会へ自立していく経験を重ねることができる環境作りに携わることができ、とても幸せに思います。
東京サドベリースクールに携わり14年になります。この度は、なぜ私がスタッフとして東京サドベリースクールに携わるようになったのか、10年以上働き続けている理由は何かを、お伝えできればと思います。
最初に、私の子ども時代のことをお伝えしたいと思います。子どもの頃は虫や動物が大好きで、野原を駆け回り、田んぼでザリガニ釣りをし ているような子どもでした。また習字が好きで、4歳から始めて夢中で書き続けたところ、気がついたら15歳で師範資格、大人になって最高段位の8段を取得していました。今では書道や、墨を使ったアート活動も行っています。
子どもの頃は工作や絵を描くことも好きで、折込チラシの裏面に印刷がないと 「ここに絵を描ける!」と喜んでいたほどでした。 こちらも今も描くことが好きで、時々販売もしています。
さらには子どもの頃から、よく人を観察するところがあり、人が怒って喧嘩している様子を見 て「もっと話しあっていけたら、怒らなくても解決できるんじゃないか」と思っていました 。
そのため、人の心に興味を持つようになり、大学で心理学を学びました。大学で学ぶ心理学の理論はおもしろかったのですが、同時に自分は実際の現場で起きていることを知りたいということがわかり、大人の心理カウンセリングの臨床現場や、子ども達の保育現場に携わりました。そのように3年間心理の現場に携わるなかで、子ども時代の原体験や環境が大人になった時の幸せや人間関係に大きく影響を与えていると痛感しました。
「自分自身の答えは、自分が1番よく知っている」ということを知りました。
また大学生時代に心理学の1つである色彩心理学にも興味を持ち学び、また子どもの創作活動にも興味を持ち、自由な創作アトリエで5年程子どものクリエイティブな創作のお手伝いをしていました。
ここではアートを通して心を育んでいく場所でした。最初は何をつくっていいか、作りたいかわからなかった子が、興味を持った画材を試してみたり少しずつチャレンジしていく中で、段々と夢中になって新しいものを生み出す姿、自分ならではの作品を完成させようとしている姿に、子どもが自分自身と本当につながっている姿が見えました。
心の底から「あぁ、よかった」と思うと同時に、「子どもが毎日のように自分自身とつながり、過ごしていける環境が必要だ」と思っていました。
こういうことが日常でできるところはないかと考えていたところ、東京サドベリースクールの存在を知り合いから「興味あるかと思って」と教えてもらい、驚きとともに私にできることをしたいと思ったのが、サドベリーに携わるきっかけとなりました。
サドベリーでは、本当に生徒達が自分を生きる姿をたくさん見させていただいています。本当にたくさんありますが、今日は携わる中で経験した生徒たちとの関わりをご紹介します。
生徒が立ち上げた『工作部』という色々なものをつくる部活で、「こんなのつくりたい!」と生徒たちがひらめいて、楽しそうに作っている姿を見られること。そして世界でひとつだけの、自分の作品ができた喜びを分かち合う時間がとても幸せです。
また中高生年齢のある生徒が自分にあまり自信がなくて、責任を負い過ぎてしまっている時がありました。その生徒と一生懸命一緒に解決を考えたり、励ましたりして、まだまだ解決の糸口が見えなかったけれど、本人が明日も頑張ろうと思える時を一緒に過ごせたときも、大切な時間を過ごせたと覚えています。
私が誕生日の時に、生徒から「いつもありがとう」とたくさんの言葉や絵が描かれた気持ちのこもったお手紙をもらったとき、これはサプライズで感動しました。
生徒たちが、好きなことに夢中になっていたり、初めてのことにドキドキしていたり、ぼーっと暇していたり、友達と盛り上がっていたり、そんな自然な表情、自然体でいられることも嬉しいですし、
ある時、保護者の方が生徒に「サドベリーのいいところ」を聞かれていて、生徒が「この場所は愛に溢れていて、みんなピュアなんだ」と答えていました。そういった場所を生徒と一緒につくることができてよかったなと思います。
少しのご紹介でしたが、これからも子ども時代に自分を育てていける環境をつくり続けていきたい、心からそう思っています。
ボランティアスタッフ
ボランティアスタッフは、他の仕事や学業を行いつつ、サドベリー教育に共感し生徒・スタッフ・スクールを様々な面でサポートしています。
木村しの
Q.ボランティアとして関わるようになった経緯を教えてください
傾聴ボランティアやカウンセリング、コーチングなど、心のことを勉強している中で、様々な書籍を通じてサドベリースクールを知りました。
祖父が校長先生をしていて、教育への情熱を身近に感じて育ったこともあり、時代は違うけれども教育ってなんだろう?と常日頃考えていたら、出会いました。
そして、自分の存在が何かこの場所に作用していくのではないかという漠然とした感覚、同時に確信にも近いその感覚を抱いて、ボランティアになりました。
Q.やりがいはどんなことですか?
わたしは、ピアノ講師を20年以上しています。音楽を通して、目の前の生徒と心を繋げることをしてきました。サドベリーでは生活そのものを通して心を繋げることをさせていただいています。
ツールは何であっても、自分という存在が道具になっていることを感じることができるのは本当にありがたく、しあわせなことです。自分自身が丁寧に生きていることを感じられる場所であると思っています。
Q.大切にしていることは?
自分の感情や思いや反応をよく見るようにしています。大事な家族や友だちに接するのと同じ感覚を目の前の生徒に持つことをしています。自分がこの場にとって役にたっているかどうかを判断しないようにしています。
渡邉雅也
Q.ボランティアスタッフに携わったきっかけは何ですか?
以前働いていた塾でアメリカにサドベリーという教育があることを聞き、東京サドベリースクールへ見学に来たことがきっかけです。
Q.スクールでどんな活動をしていますか?
8年間ボランティアスタッフをしていますが、前半は生徒と一緒に遊んだり、生徒が興味のあることを話したりするという活動が多かったと思います。
後半になるにつれ少しずつ在り方が変わり、スクール内でのスタッフのサポートや個々の話を聞くということが多くなりました。勉強のサポート等もありました。そこにいる「人」によって変わってくるのかなと思います。
Q.ボランティアスタッフをされている喜びは何ですか?
OBOG生徒が今でも連絡をくれたりスクールにいた頃からどう成長したかを知ることができるのはとても嬉しいです。もちろん在籍中にいろいろ変化、成長する様子も楽しみではありますが、やはり社会に出て1人の人間として生きていくことが大事ですから。
濱田悠
Q.ボランティアとして関わるようになった経緯を教えてください
仕事やプライベートで行き詰まり、悩んでいたときに「自分らしさとは何か」について考える事がありました。
わたしは今まで「他人にどう見られるか」ばかりを気にして、「自分はどんな人間なのか」を深めてこなかったように思います。
自分で考えなくても与えられた事をこなせば、それなりの評価をもらえてきた今までの環境に疑問を持つようになり、「自分の人生を生きる」を実践している現場(サドベリースクール)に興味を持ちました。
Q.やりがいはどのようなところですか?
毎回学びの連続で、自分がいつも問われていると感じます。(笑)
生徒に「自分で考えて自分らしく生きる」を勧めるのであれば、果たして自分はそれができているのか?
自分(自分たち)のことなのに「誰かがより良くしてくれるだろう」と思っていないか?人に何かを求める前に自分で行動できているのか?「自分が変えよう」と思えているか?皆で決めたルールを守ったり守らなかったりしていないか?生徒にその姿を見せられるか?などなど。。(笑)
その意識は、サドベリーから離れた日常や仕事でも、自分の中に強く芽生えるようになり、職場での振る舞い方や、仕事の仕方が少しずつ変わっているのを感じています。
Q.東京サドベリースクールの魅力はどのようなところでしょうか?
生徒もスタッフも皆、対等であること!誰の意見も尊重され、個人が安心して発言したり自分を表現できる場所だと感じています。また、スタッフ同士も仲が良く、色んな話をしたり、悩みを聞いてもらったり、信頼できる仲間に恵まれ、とても幸せだなと感じています。
以下OB・OG
津村瑛子
Q.ボランティアスタッフに携わったきっかけは何ですか?
教育業界に転職をするタイミングで、ビジネス系の講演会でお子さんがサドベリースクールに通ってる方のお話をお聞きし、とても興味が湧いたのがきっかけです。
Q.スクールでどんな活動をしていましたか?
ボランティアスタッフとして携わる日は1日生徒の皆さんと一緒に過ごしました。話したり、一緒に遊んだり、掃除をしたり、何かを作ったり。真剣なミーティングに参加したり、外に出かけるのに一緒に行くこともありました。
Q.ボランティアスタッフを経験されて、嬉しかったことや、今役に立っていることは何ですか?
今、神戸市で教員をしています。1番自分の力になっていることは、生徒の皆さんと 一緒に時間を過ごした中で、人が必要を感じた時に自ら学ぶ力や、協力して何かを成し遂げる力を心から信じられるようになったことです。
また、率直に話すことの大切さを学んだことですね。嬉しかったことは、一緒に時間を過ごした思い出そのもの。今も7年間の日々を思い出すことがよくあります。
山岸桃子
自分の価値観が変わり、見える世界も変わった
大学3年の3月。
部活の一部を引退し、「実際に私は何がしたいんだろう?」と改めて考え、自分に問いただし、探して出会った1つ。それが、東京サドベリースクールとの出会いでした。
大学では、なんとなくボストンの「サドベリーバレースクール」を取り上げて学習していましたが、インターネットを通じて東京サドベリースクールの存在を知り、とても魅力的に感じました。 それまでまさか日本に、このような素敵な学校があるとは思ってもいませんでした。
理念などを読んでも、「全て賛同!こんな素敵な学校が広まればいいのに!」「どうしても関わりたい!」と思い、サドベリーボランティアにメールを送りました。 そしてサドベリーに関わる方は、みんな心が綺麗で1度会っただけでどんどん魅力を感じて、人間にも学校にも引き込まれていきました。
私は生活の中で「これなんだろう?」「なんで?」という疑問を自分で持って、調べて解決していくときにこそ気づきや学びがあるのだと自分自身感じています。東京サドベリースクールは、子どもたちの自然な自発性を大切にしている学校で、魅力的だと思いました。
また、様々なことに対して、良い、悪いの評価がなく、ありのままを受け止めて、想ってくれる環境だと感じています。「みんな違ってみんないい」という言葉がぴったり。ゆっくり時間をかけ、事実(行動、見た目など)の裏に隠された内面を見ていきます。
サドベリースクールをやっていく上で、子どもやご家庭の方だけでなく、関わってくださる方、スタッフの気持ちも大切です。 心のシェア(今自分がどんな気持ちかをそのままを話す時間)、グッドアンドニュー(よかったこと、新しいことを話す時間)、経験、学び、知識、気づきを共有したり、自分、相手の「心」を大切にしている場でした。
そんな素敵なサドベリースクールでボランティアスタッフとしてさまざまな経験させていただいて、私は自分の価値観が変わり、見える世界も変わりました。 過去のもの、人、出来事の出会いから今の自分がいること、だからこそ全てに感謝すること、大切な人を大切にして、想いから行動すること、やりたいことをやること。大きなことから小さなことまで多くのことを感じました。
また、少しずつ自分を知ることもできました。そして、何よりもありのままの自分を好きになり、愛せるようになりました。 「ありのままの自分でいいんだ」「この自分を大切にしよう」と心から思いました。自分を大切にすることの中には、人を大切にすることも含まれています。
本当に出会えて良かったです。 自分の小さなひとつの勇気によって、広がっていった世界です。これからもこんな色々な素敵なものが詰まっている学校が広まって欲しい。応援していきます!本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
山田一衣
子ども一人一人の面白さが際立つ場所
大学生のはじめに塾講師を経験しました。成績が上がり自信をつけていく生徒たちの姿にやりがいを感じていたものの、学習範囲や成績評価など、一方的な「学び」に疑問を持っていました。
そんな時期に出会ったのが「東京サドベリースクール」です。
サドベリーの特徴は、子どもが自ら学ぼうとする力を信じることにあります。それをどこまで信じるのか、私は彼らに、一体何をどこまですることができるのか葛藤する日々です。
ですが、彼らの成長にハッとさせられたり、それぞれが個性を活かして何かを成し遂げる瞬間に立ち会ったりできることを嬉しく感じています。「特徴的な教育方法」の面白さももちろんですが、ここの面白さは、「子ども一人一人の面白さが際立つ場所だということ」にあると思っています。
また、ボランティアスタッフとして生徒と関わることで、常勤のスタッフとは違う関係が生まれます。人と人が交わることで「学び」が芽生える場所、それが東京サドベリースクールです。
田口真妃
自分で出す何よりも尊い一歩がある
授業のない学校って、どんな学校なんだろう、と興味を持ってサドベリーに関わらせていただき1年。
余白があるから興味をもてる、余白があるから試せる、そうした日々の積み重ねが、きっといつか子どもたちの大きな大きなエネルギーになっていくんだろうなって思う。
自分のうち側からくる矢印がどこに向いているのかって、気付かず時間が過ぎてしまうことは多い。きっとサドベリーはその矢印を大切にできる場所なのかなと思う。
私もそうだが、1番難しいのが「待つ」ということ。どうしても、これやっといた方がいいよ、こうするんだよ、つい「すぐに」言いたくなっちゃう。
その先に自分で出す何よりも尊い一歩があるはずなのに。それが最大限にできることこそ、サドベリーの魅力だと私は思う。
このボランティアスタッフとして関わらせていただいた時間は、これからどの教育機関に関わるとしても必ず活きてくると感じている。