【スタッフ教育コラム】受け身の自分から、生み出す自分へ

サドベリーでは個人が自由に自ら活動できる時間と空間が溢れている一方で、社会では与えられることが溢れている影響で多くの子どもたちは受け身になりやすくなっています。
そのため、よほど本人や家族が意識していないと、子どもが自ら何かを生み出す経験が少なくなってしまいます。

実際にTSSでも、特に体験期間中や入学してまだ年月が浅い生徒は、自由な中で何をしていいかわからなかったり、正解を求めすぎて動けなかったり、失敗が怖すぎて新たなことに挑戦しづらい子もいます。
それゆえ、好きにできる自由さがあっても、生徒によっては意外と活動が固定化されやすい面もあるのです。

そんな中で以前より、
「固定化しやすいならそれをわかっていて、どう対処していくかが大事。だから、みんなで楽しいことやってつくっていかない?」
というメンバーが、色々な活動を生み出せるように、自ら楽しみを生み出せるように活動しています。

今回の話し合いも
「なにする?」「なにやる?」
から始まり、
「前やった伝言ゲームはどう?」
「いいね!でも前やったから今回はやったことないことやってみるのは?」
などアイデアを出し合い、最終的に
「じゃあ伝言ゲームだけど、言葉で喋らずに伝えるのはどう?」
「何それどんな?!」
「やってみよう!」
とみなで遊びを作っていきました。

一般的な“言葉の伝言ゲーム“を下敷きに、少し制限があった方がおもしろいので、まずはルールづくりからはじめます。
そこで今回は“ジェスチャーと音だけで伝える特別バージョン”にしました。


こういう時、まだアイデアを生み出しづらい生徒も、経験を重ねることでだんだんと慣れて出せるようになってきます。

順番待ちの生徒とスタッフは、音が聞こえないように別々の部屋や階段で待機。
他の人には見えないように、伝える人とジェスチャーで何かを伝え、
受け取った人はまた次の人にジェスチャーで伝えることに。

いざ本番になると、
「え、これなに?!」
と戸惑う声が続出しつつも、想像を超える動きや音に大盛り上がり!
そして大爆笑!!

実はこの活動には自ら生み出す経験をすること以外にも、その時に生み出されたアイデアに様々な効果があることも多いものとなっています。

例えば今回の喋らない伝言ゲームにも、仲間との友情を育む以外に様々な効果があるのです。
コミュニケーションにおける言葉の意味は1割にも満たず、視覚と聴覚情報で9割以上と言われているので、自然とコミュニケーションの練習になっています。

また言葉を使わず、相手をよく見て動いたりそれを再現することは、「伝える」「受け取る」双方が相手に意識を集中する訓練としても知られています。

さらには前述の通り、現代はモノが溢れ生まれた時から周りから与えられる社会なので、新しい遊びを生み出すことに慣れていない子も多いもの。
そのため、新しい遊びを生み出すことはクリエイティビティーの種と芽を育てることにつながってきます。

そして何より、楽しい!
楽しい時間は楽しい1日に、そして楽しい人生につながっています。

今回の「喋らない伝言ゲーム」は言葉なしで表現するからこその難しさと面白さが混ざり合い、仲間と工夫する楽しさがどんどん広がっていく楽しい時間となりました。

自由だからこそ自由に楽しみを生み出し、そこにあえて自分たちで制限を作ることで工夫する楽しみも生み出す。

サービスされることが当たり前の社会であえて大人が全力で「与えない」からこそ、生徒が自ら「生み出す」経験ができるのがTSSの教育の醍醐味となっています。


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