【スタッフ教育コラム】自ら動き、共に栄える、民主主義力を育てよう

皆さんは”民主主義”と聞くとどのようなイメージを持たれますか?

なにか仰々しいことや、実感が持ちにくいことに聞こえるかもしれません。
しかしかみ砕いていえば、「自分たちのことは、自分たちで決めよう」 ということに他なりません。
それは人がふたりいて対等に話し合えば、もうそこは民主主義の場なのです。
パートナー、家庭、職場から町、国や世界まで、私たち人間は「話し合う」という手段を通して、共に繁栄する道をつくってきたのです。

しかしその民主主義は、いつでも絶対強固なものとして、安定していたわけではありません。
いつの時代も「民主主義の危機」が叫ばれてきましたが、現代もその例外ではありません。

少しのずれや、誰かの無責任、または悪意によって、あっという間に崩れてしまうもろい面も持ち合わせている。
つまり民主主義というものは、大切に育てなければ枯れてしまう花に似ています。
しかしその一方、一部の権力者が多数の民を支配する権威主義から何度も復活する大地のような力強さも持っています。

そしてその、民が主役の民主主義というものは、
自分たちが自分たちの社会を統治するゆえに、誰かから与えられるものではなく、
一人ひとりが自ら動き、共に築き上げていくものだと、わたしたちは考えています。

東京サドベリースクール(TSS)は2009年の開校以来、生徒たちが日々のスクール生活の中で主体的に考え、
意見を交わし、時にぶつかり合いながらも新しい合意を生み出しながら、
自分たちのコミュニティであるスクールを運営する経験を支えてまいりました。

生徒たちは  自由と責任を手にし、仲間と共にTSSという小さな社会を運営していく経験を通じて、
「自ら動き、共に栄える」民主主義の力を確かに育んできた実績があるのです。
それもひとえに、一人ひとりが豊かな人生を生きられるよう、自他を認め、共に社会をつくる人に育つサポートがしたいから。

この度は、それらの実践のために大切にしている5つの要素をご紹介します。



1. ルールづくりの場
TSSでは、ルールは大人から与えられるものではなく、
生徒とスタッフが対等に話し合い、合意を重ねながら自分たちでつくり上げます。
そこには「どうすれば安心して過ごせるか」「何を大切にしたいか」といった一人ひとりの思いが反映されます。
ときに意見の着地点が見るからず、葛藤が生まれることもありますが、その解決を共に模索する過程こそが教育の中心です。

自らの声を相手に届け、また相手の声を受け止める力をリアルに身につけることは、より良い未来社会を形成する一員として欠かせない基盤となります。
TSSは「与えられたルールに従う」のではなく、「自らルールをつくる」力を育む場なのです。


2. 多年齢での関わり
TSSには年齢によるクラス分けがありません。
様々な年齢が共に過ごし、遊びや活動を通して自然に学び合います。
年上の生徒がリーダーシップを発揮する場面もあれば、年下の生徒の方が詳しい場合は教える側になることも。
異なる年齢が混ざり合うことで、互いの違いを認め、支え合う力が育まれます。
これは単なる「仲良しの雰囲気」ではなく、多様な価値観を尊重しながら協働する社会の縮図です。
社会では年上が必ず正しいということも、年下が必ず正しいということもありません。
年齢に注目するのではなく、その意見に注目するのです。
TSSでの日常は、子どもたちに「年齢を超えた共生」を体験的に学び、
人間社会で不可欠となる柔軟性と包容力を磨く実践の場となっています。



3. 対話と合意形成
TSSにおける日々の営みは「対話」を中心に展開します。
ミーティングと呼ばれる話し合いの場では誰もが発言でき、意見の違いを単に多数決で決着するのではなく、
互いに理解を深め合いながら合意を探ります。
ときには時間をかけて議論が続くこともありますが、その過程は「相手を説得する」のではなく「共に納得する」ための積み重ね。
ときには時間をかけて議論が続くこともありますが、その過程は「相手を説得する」のではなく「共に納得する」ための積み重ね。
子どもの時から日常的に経験できるようにしています。
対話の積み重ねによって育まれるのは、他者を尊重する姿勢と、自らも責任をもって社会に参画する力です。


4. 責任と自由
TSSの教育における自由は「大人の決めた枠の中の自由」ではありませんし、「好き勝手に振る舞う自由」ではありません。

それは「責任を伴う自由」です。自分の時間や活動を自ら選び取れる一方で、その結果や影響は自ら引き受ける必要があります。
例えば道具の管理や約束を守るといった日常的な行動も、コミュニティの一員としての責任を象徴していますし、
自由に意見が言えて自由に1票の権利を行使できるひとりとしては、その責任感も学ばなければなりません。
この自由と責任の両立は、自己管理の力を養うだけでなく、他者との協調を不可欠なものとします。
TSSの生徒たちは「自由に生きる」と同時に「責任を果たす」経験から、社会で自立した存在となるための基礎を築いていきます。



5. 社会の縮図としての学校
TSSは単なる「学びの場」ではなく、社会そのものを小さく凝縮した「実践の場」でもあります。
多様な年齢、価値観、興味を持つ人々が集まり、ルールもつくり、コミュニティを運営していきます。
そこには当然、葛藤や対立も存在します。
しかし、それをどう受け止め、どう調整していくかを各自が真剣に考え、実践する。
子どもたちは「社会は誰かが用意するものではなく、自分たちが築くもの」であることを学びます。
TSSでの経験は、未来にどんな社会が待っているかとともに、どんな未来をつくっていくかを自ら考え、
行動し、他者と共に生きる力を確かなものとして培っていく教育です。



私は市民教育・民主主義教育を、スクール教育の柱に据えている身として、
民主主義発祥の地と呼ばれている、ギリシャのアゴラと呼ばれる場所を訪れたことがあります。

古代ギリシャの約2500年前から現代まで、何度も復活してきた民主主義の精神。
それはお伝えしているように、支配され従わされるのではなく、
自分たち一人ひとりが主役として、自分たちの社会をつくり、
共に栄えていこうという前向きな姿勢なのです。

子ども時代にその姿勢と経験をすることは、社会と人との間で必ず活きてきます。
その大事なことを生徒には経験を通して学んでもらいたく、私たちは一生懸命環境を整えています。

(スタッフ 杉山)


【安心して自分を育てられる環境を、子どもたちに】
学校説明会(毎月休日開催):次回9月27日(土)
 休日に親子でご参加いただけます。学校説明と共に、生徒にもじっくり質問できます。
親子見学会(毎週火曜日)
 平日に親子でご参加いただけます。学校説明と共に、生徒の普段の様子をご覧いただけます。
1日学校体験
 平日にお子様が1日体験できます。お子様ご自身が実際の雰囲気を感じることができます。





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