【スタッフ教育コラム】話し合いをあきらめない

「答えのないことに答えをつくる経験」
スクールで話し合いをしていると、あっという間に長時間になっていることがあります。

例えばスクールの経営についてのミーティングも、ディズニーランドに皆で行く話し合いも、途中で「もうやだー!適当でいいよ!」とならず、大変そうではありながらも粘って粘って話し合いを続けています(もちろん結論がなかなか出ず、時には「もうやだ~」となっている生徒もいますが)。

長時間やればよいというものではありませんが、人生には時にとことん話し合うことが必要な場面があります。でもそのことに思い入れが多くない場合、そこであきらめることもある。しかし人というのは、そもそも思い入れがある場合は粘り強くあきらめません。また「この話し合いは大事なんだ」と自覚していると違います。

ひざを突き合わせて議論し、頭と腹の中のものを出し尽くして、1度で終わらなければ日を変えて何度でも。そのようにまわるだけ大回りして、パッと「それいいね!」と答えが出てくることがあります。TSSの話し合いは、その全てに誰も“正しい”答えを知っているわけではありません。それはスタッフさえも。そのためスタッフも折に触れて生徒に「スタッフが、大人が言っていることが全て正しいわけじゃないよ。自分で考えて決めることが大事だよ」と伝えています。


「互いに歩み寄ること」
そのような中、コミュニティーのことであれば、生徒もスタッフも答えのないことに答えをつくっていきます。そのためには1人ひとりが心を開き、考え、相手の気持ちと意見を尊重しながら攻撃的にならず、あきらめず、聞くこと伝えることを続けていくこと。それができて対話となるのです。そしてお互いにそうしていると、まさに「パッ!」と道が開けることがあります。そして元の状況より、より良くなっていく。それはもはや“次元が変わった”といえるほどです。

そもそも話し合うということは、お互いの心に歩み寄ること。それは自分の意見を抑えて相手に服従する事ではありません。
また一方的に従わせるものでもない。それでは話し合いではなく支配です。

1人の人間同士として、相手が受け取りやすいように伝え、相手にもこちらが受け取りやすいように伝えてもらう。自分が勝つために相手にぶつけるドッジボールではなく、お互い取りやすいようにボールを投げ合うキャッチボールが話し合い。そのような関係でこそ生まれるものがあります。


「とある生徒の話し合い」
あるスクールでのルールミーティング(ルール違反を検証・解決する司法の場)で、男子生徒のふたりの意見が、真逆というほど別れました。それはある同窓生がスクールに遊びに来た際、ルールを守れていなかったことについての内容でした。その対処の仕方について意見が分かれたのです。

議長や参加者が注意深く話しを聞き、それぞれがその意見に至った考え、それぞれの生徒の人生経験からなぜそういう結論になったかを話してくれました。全く反対の意見であっても、終始静かに、淡々と話し合いが行われたのです。怒号や感情が爆発することなく。反対意見だからといって、感情的になる必要はありません。「そうなんだね。僕は違った視点からこう思うよ」と伝え合えばいい。考え方が真逆でも、互いの考えを尊重し合っていました。


「話し合いだからこそ生まれる納得感」
話し合いというのは時にとても面倒なものです。それよりも、「こうだ!」と誰かが決めてくれたり、相手の意見など聞かずに決めてしまった方が楽かもしれません。人数が増えれば、それだけそれぞれの意見を含めて考える必要も出てきます。

でも話し合いだからこそ生まれるものがあります。それは皆の納得感です。
誰かが勝手に進めていけば、同じコミュニティーの一員として納得できないのは当たり前。

納得できていないと、感情が出やすくなるもの。それは、自分が大切にされていないと感じる無価値感だったり、反発心だったり。
また、その時は「まぁしょうがないかな」と思っても、いつかそれが噴出してしまう。もちろん、「しょうがない」ということでも、本当に納得していればいいと思います。また「しょうがない」と思い、何とかしようとしなかった自分にも責任があります。


「自分たちの場所を育てる」
TSSはサドベリー教育を軸とした学校コミュニティーです。そしてコミュニティー文化は1人ひとりが育んでいくものだということを学ぶ場所でもあります。TSSという場所を使って、生徒達が自分の人生をつくっていくのと同時に、みんなで自分たちの社会をつくり育ててもいるのです。過去から引き継いだ社会を、自分たちが幸せに生き、次につなげていくために。

人はできるだけ次世代を残すために、長生きするために、幸福に生きるために他者と協力して生きる道を選びました。その集まりが社会で、社会の中では他者とコミュニケーションを取ることが鍵となります。つまり話し合いは人が人と生きていくための手段なのです。

ですからTSSでは、子どものうちから皆で話し合う経験をたくさんして、できるだけ1人ひとりが自分で納得して進めていくことが大切だと考えています。その話し合いをあきらめない姿勢が、人類の歴史をつくってきましたし、次の世代がこれからの世界をつくっていけると信じています。その経験をTSSで生徒は当たり前というほど、日頃から実践しています。だからこそ、日々話し合いやコミュニケーションを行い、他者との深い信頼ができる人間になっていくのです。それは大人になって基礎的な力の1つとなり、生徒自身の人生の幸福に有効に(※)働いてくれると考えています。

※)The key to healthy aging is relationships, relationships, relationships./

(スタッフ 杉山)


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