【卒業を目の前にして】サドベリーで学んだ3つのこと

しばらく前になりますが、2016年に行った講演会での生徒×スタッフの対談がとても好評でしたので、改めてご紹介いたします。6年間通った生徒の入学から卒業までで学んだ3つのこととは?どうぞご覧ください。

2016年東京サドベリースクール教育講演会 【生徒×スタッフ対談】

こんにちは、生徒のY(以下、生)です。現在18才で、東京サドベリースクール(以下TSS)には、中学校1年生の学年の頃から6年間通っています。

こんにちは、スタッフの加藤(以下、ス)です。Y君は来年3月に卒業予定という事で、6年間通ってY君が何を感じて、何を思っているのかという事を、本日お聞きしていきたいと思います。さっそく1つ目の質問ですが、サドベリーに通って何を学んできたと思いますか?

生:いきなり大きな質問ですね(笑)。そうですね、3つほどあります。1つ目が自分の力で自分で決めた目標に向かって動く力がついたと思います。2つ目が自分の心をよく見ること、客観的に見られるようになっているなということ。3つ目は、コミュニケーション能力がすごくついたかなと思います。自分はこれは一番自然についたなと思います。

ス:1つ目の、目標に向かって動くというのはどういうことでしょう?

生:たとえば今回のような講演会で実行委員をしてきました。自分から立候補して、率先してやってみる、意見をしっかり言うとか、そういう所かなと思いますね。

講演会の準備を積極的に行う

ス:具体的にはどういうことをしてきたのですか?

生:僕が入ってすぐくらいに、卒業生する男の子がいたんですね。彼が当時サドベリーですごくリーダーシップを取っていたような生徒だったので、その生徒が卒業してから、「あれ?サドベリーを引っ張っていく人がいないんじゃないか」と思ったのですね。そして「俺が引っ張っていかなきゃいけないんだ」みたいな事を考えていました(笑)。それでなにかやれることがないか探していたら、経営メンバーという学校の運営や経営、学校を広めるための講演会を開催し内容を決めるなど、学校の根幹のようなメンバーがいるのですが、是非これをやってみようかなと思って始めたのが、本日話すきっかけでした。

ス:昔から、そのように自分でどんどんと動いていくタイプたったのですか?

生:いえ、そうでもないですね。小学生の頃とかは本当にずっと泣き虫で、意見とかも全然言えないタイプだったのですが、言えるようになりましたね。

ス:なるほど。2つ目の「自分の心を良く見ること」「客観的に見る」というのはどういうことでしょう?

生:自分の悩みや、自分のやりたい事をよく見られるようになった感じですね。例えば自分で言うのもなんですけど、僕は明るいタイプなんです。小学生の頃は先生とかに怒られても次の日にケロッとしている感じなので、先生によく「Y君は怒っても次の日ケロッとしてくるから、ほんとよく怒れるわ~」ってなんか訳分からない事言われてたんですけど(会場笑)。

ス:良いのか悪いのか。

生:どっちなんでしょうね(笑)。でも、泣き虫だったんですけどね(笑)。サドベリーに入ってからほんとに…ほんとに自由なんですよ。自分の事を1から見つめていかなくてはいけなかったので、そうしていくうちに「俺ってこんなにいっぱい悩みがあるんだな」って気づいて。サドベリーに入って気づくようになりましたね。

ス:自分の悩みに、自分で気づいた。

生:そうですね。「なんで悩まなかったのかな~。押し殺していたのかな~。」なんてその頃思いました。実は小学校2年生くらいの時、1年間ずっといじめにあっていたんですよ。本当にクラス全員から。僕は牛乳と卵のアレルギー持っていて、その事でちょっといじめを受けていたのですが、その頃に自分の気持ちを押し殺していました。そこで気持ちを押し殺すようになっちゃったのかなと思います。

ス:自分の悩みに気づいて、どのように向き合っていったのですか?

生:サドベリーはやることが自分で決められるので。「じゃあ今からご飯食べようかな?でもご飯も食べたいけどやっぱマンガも読みたいしな~」なんて思ったりとかしていました。そして「あ…でもやっぱりちょっとゲームもやりたいな~」なんて色々考えちゃって。それでまずは、1つずつやってみようかなと思い、ちょっとずつやっていったら段々気持ちに向き合えるようになりました。最初は泣いちゃったり怒っちゃったりとか、自分自身のコントロールがうまくできませんでした。でも気づいたら、もうあまり泣くこともなくなりました。怒るときは怒りますし、嫌とか言いますけど、でも自分で気持ちのコントロールができるようになったと思いますね。

ス:自分の気持ちを客観的に見ることで、一呼吸置けるのですよね。

興味のあることを他者と共に完成させる

生:はい。

ス:サドベリーでも、みんな人間なので感情的になることももちろんあります。でもそれに自分で気づいて、「自分はどんな気持ちなんだろう」と考え続ける。それは次の人とのコミュニケーションに繋がってくると思います。先程の3つ目のコミュニケーションという部分では、自分の内側と繋がるということと、人とのコミュニケーションは深く繋がってきますね。

生:そうですね。サドベリーの子はみんなすごくよくしゃべると思います。色んな話をするんですよ、ゲームの話から政治の話とか。他愛のない適当な話でも、すごくよくしゃべるんです。それで、サドベリーの子達と話している時に、「話しきったな」と思えることがすごくあります。その理由を考えた時に、やっぱり自分自身が本当の自分で話しているから、相手の話もよく入ってくるし、自分もよく話せるのかなと思いましたね。

ス:なるほど。例えば先日、参加したいイベントがあると言っていた生徒がいたのですが、その生徒は参加をすごく迷っていたのですよね。その時に他の生徒が「参加したいの?参加したくないの?」と聞いたんです。その子が「参加したい」と言った瞬間に、「参加したいなら参加すればいいじゃない!」って。

生:確かにそうですね(笑)。

ス:すごくストレートなコミュニケーションをしている。もちろん思いやりを持ってですけれどもね。

生:はい、そうですね。

ス:Y君は公立の小学校に6年間通って卒業されたのですよね?

生:はい、愛知県のすごく山奥で、もう廃校になってしまいました。そこは全校生徒がサドベリーより少ないぐらいの所に通っていました。

ス:そういう意味では、ちょうど一般的な小中高校の年数にあたる12年間のうち、それぞれ半分ずつ通って来たのですよね(公立小学校6年間とTSSの在籍年数が6年間)。両方通ってみて、何が違うと思いますか?

生:そうですね。まず「生徒・スタッフの関係」と、「生徒同士の関係」がまず違うなと思っています。小学校はどうしても、上級生とか下級生とか、先生も本当に「先生」というか、ちょっと離れた存在っていう感じがしていました。サドベリーはそういうのが本当にありません。どんな年齢の子でも、スタッフも自分達も1人の人間として接しています。そういう所が大きな違いかなと思います。

ス:なるほど、人間同士の対等性ということでしょうか。

生:そうですね。僕もよく小さい子にずけずけ言われてしまうのですが、そういうことは一般的な学校では、ありえないと思います。何年か前に、以前住んでいた所に遊びに行ったのですが、中学生に上がった子達の間で上下関係ができていて、小学校時代はすごく仲良かったのに、こういうのが公立の学校ではあるのかな、と感じましたね。

ス:サドベリーは学年・クラス分けが無い中で、大きな家族のようにいつも一緒にいますからね。他にはありますか?

生:時間割も一切ないので、自分の時間がある、自分のペースで動けるのが大きいと思います。やっぱり一般的な学校は、どうしても時間割や給食の時間があったりするのですが、サドベリーは皆で決めた登校と下校と掃除の時間以外は全部自由なので、1から全部自分で好きなことに没頭できます。何かやりたいことがあったらそれにずっと没頭できるというのはすごくいいな、と思いますね。

ひとりの時間も大切にする

ス:昔のY君と、今のY君を比べてみて、自分自身で「変わったな」と思う事や、「変わってないな」と思うことはありますか?

生:変わった所といえば、先ほどお伝えした自分のことをよく見られるようになったことがありますね。ミーティングなどで意見を言う時も、とにかく心に問いかけてから言うようになったので、意見を言えるようになりました。変わっていない所といえば、根本の性格は全然全く変わっていないと思っています。自分の小学校時代を知っている人から「全然変わっていないね」って言われる事もありますし、すごく大人になったねって言われる事もありますが、根本の性格は変わっていないと思いますね。

ス:ご両親との関係性や、コミュニケーションというのはどういう風にしていますか?

生:そうですね。昔は月に1回ぐらい悩み事があったら打ち明けていたのですが、最近はそういうことも一切無くなりました。家族なんだけど対等な立場の家族。親子っていうよりは同じ所に住んでいる、という感覚で対等に接することができるようになったと思います。ケンカしても僕が一方的に言われるだけだったのですが、反論できるようになったりとか、すごく信頼度は高まったと思います。小学5・6年生ぐらいの時、僕は反抗期だったので、顔合わせるとケンカしていました。そういうのも改善したと思いますね。

ス:家族におやじギャグとかは言わないんですか?

生:おやじギャグ…まぁ言っても大体スルーされますね、両親の場合。

ス:Y君はよくスクールでおやじギャグ言いますよね。

生:まあ、言いますね…そう、言いますね…(会場笑)。今なんかすごく「言え!」みたいな感じになっているんですけど…。(会場爆笑)言わなきゃいけないのかな…?

ス:いやいや、大丈夫ですよ(笑)。そろそろ最後の質問なのですが、現在18才ですよね?将来どういう風に生きていきたいと思っていますか?

生:そうですね、まず自分のペースで生きていきたいと思っています。僕はもともとすごくマイペースなのですが、そのペースを大切にしていきたいなと思っています。社会のペースもあるのですが、その中でも自分自身はちゃんと持っていけたらいいな、と思いますね。自分にすごく正直にいたいなと思っています。よく、SNSなど見ていても自分に正直でない方なども見かけたりするので、できればそういう風にはなりたくないかなと思っています。せっかくこうやって自分を見つめる所にいるのですから、自分の好きな事や、自分に正直になって生きていければなと思っています。

ス:ありがとうございます。今ですね、タイムキーパーの生徒から「ギャグで締めて」と言うカンペをいただきまして(笑)。

生:あぁ…、え?本当に?(苦笑)。どうしようかなぁ。今回の講演会の会場の隣が代々木公園なので、最初それ聞いた時に、「あー講演会だから公園でやるのね」って思いまして!(会場沈黙)……わぁ!もう微妙な空気になったよ、もぅ!!(会場爆笑・拍手喝采)

ス:はい、こちらで、生徒・スタッフ対談を…

生:このまま締めちゃうんだ!(笑)。

ス:はい、終了とさせていただきます(笑)。ありがとうございました!

生:ありがとうございました!(会場拍手)

後日談:

Y君は自身で卒業生として認められたいと、生徒・スタッフ・保護者の前でスピーチを行い、規定数以上の承認を得て卒業生となりました。卒業後は大好きなクライミングジムで運営や教える仕事をしています。

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