【スタッフ教育コラム】東京サドベリースクールの設立と社会の未来
それは“偶然”だった
ある日、何気なくテレビをつけたら放送されていたNHKの番組。それは、今思えば私の世界を圧倒的に決定づけた瞬間だった。番組を見始めてすぐ「おもしろい!!」と、気がついたら手元にあったメモ用紙に、その学校の内容を書きなぐっていた。そのメモは今でも手元に置いてある。私の原点である。
その学校こそ、アメリカマサチューセッツ州にある、サドベリーバレースクール(SVS)。番組で紹介されていた学校である。そしてその数年後、私は東京サドベリースクール(TSS)を設立したメンバーのひとりとなった。2009年に設立した時、私は28歳で、メンバー最年少だった。
設立したと簡単にいっても、初めてSVSを知ったときの私はいわゆる、「資金なし・人脈なし・経験なし」の、ないないづくしだった。教師の経験もないし、大学も出ていない。自分の子どももいない。
後から知ったのだが、市民立で学校をつくるというと、教師経験が豊富であったり、華やかな経歴や学歴があったり、またビジネスをしていて資金があったり、また自分の子どものために、といった方々が多い。私はどれにも当てはまっていなかった(今でもあてはまらない)。
しかし、実はそんなことはあまり関係がないようだ。もちろんあれば便利だと今も思うこともある。でも、私はそれに出会ったのだ。なければつくればいい。必要なら得ていけばいい。やらない理由はたくさんあるし、やれない理由はもっとたくさんある。やる理由やできる根拠の方が圧倒的に少ないけれど、でもその「やりたいなにか」が自分の中にあるのなら、チャレンジしてみたらいい。

心の声に従おう
とはいえ、SVSに初めて出会った頃からそのように考えていたわけではない。最初はただただ好奇心だった。「おもしろい!この学校をアメリカに見に行ってみたい!」という気持ちだけで、なにも日本の教育を変えたいだとか、そのような学校をつくりたいとも思っていなかった。だから、私は必ずしも、何かを始めることに高尚な理由がなくてもいいと思う。私はよく「興味・関心・好奇心」というが、それらに従って少しずつ進めていたら、そのような大きな目標が生まれることもあるのだろうと思う。追求していく中で、もっと大きな理由が生まれることもある。まずは、そして根本に自分の好きやおもしろいがあることが本当に力になってくれる。
当時の私はまず、インターネットでそのような学校のつくり方の情報を集めたり、書籍が出版されていないか、されていれば読んでいくことをこつこつとしていた。日本で似た実践をしている人がいると知れば勇気を出してコンタクトを取り、イベントに参加し、声をかけた。またSVSに見学に行く方法を調べ知ったが、当時の私には渡航のための費用がなく、そのため初めて親に頼んでお金を借りた(その後数年かけて返した)。
親のおかげで無事にSVSに行くことができ、短い数日という滞在ではあったが訪問でき、帰国した。しかしだからといって、すぐに学校をつくれるわけもなく、「経験を積もう」と、私は当時していた乳幼児に関わる仕事を続けた。同時に、「できることもしよう」と、日本中の様々な学校や教育実践者にお会いした。
私は社会人になってから子どもの仕事をしたいと考え働き出し、偶然、子どもの仕事をさせていただけることになって働いていたが、当時の時給は700円に満たなかったと思う(時代と地方だったので)。手持ちの資金はいつもない。夜や週末に別の仕事をし、青春18きっぷを使ったり、夜行バスで節約しながらなんとか工夫し、たくさんの教育現場や教育実践者に会っていった。
そのような中で出会った全国の実践者は素晴らしい方たちばかりだった。しかし、その多くはほぼボランティアベースで働いていた。例えば旦那さんの稼ぎで生活していたり、私と同じように日中に子どもの仕事をしながら夜や週末に別の仕事をして収入にしている方も多かった。想いが素晴らしいのに、それでは体がもたないし、もっと健康的にきちんとその仕事で生活ができる必要があると考えていた。実際に活動できなくなっていった方や団体もあった。
ただこれは、教育に限らないと思う。ほとんどの市民立の非営利団体は公的支援がわずかか、全くない。ビジネス経験もなかったりする。皆、志を持ちながら頑張っている。むしろ頑張らずに続けることはできない程だとも思う。しかもなぜか、新しく子どもや社会のために一歩を踏み出した人を批判する人は意外にたくさんいる。TSSも「学費が高い」「見学するのにお金が必要なのか」など言われてしまうこともあった。公的援助がない中、子どもたちがサドベリースクールも選べるようにと始めて、子どもたちが通い続けられ、スタッフもある程度ちゃんと生活できるようにと学費などを設定していてもである。東京の公立小中高校は子ども1人あたり1年で約100万円の税金が投入されている。サドベリーは0円である。

現場、制度、意識
私はいつしか「サドベリーがおもしろい!」と同時に「もっと子どもたちが自由に教育を選べるようにしたい」と思うようになっていった。
そのために私は、子どもの権利のためには社会の中で、次の3つが必要だと考えるようになった。
①現場:子どもが教育を選べるようにしていくには、まず現場が必要である。現場がなければ子どもは選びようがない。子どもは皆違う。もっと、根本的に様々な教育や育ち方の選択肢が必要だ。しかしそれは現在の一般的な教育や学校を批判しているのではない。それらも含め、“本当に“多様な実践現場を選べることが必要なのだ。その中の1つに、今の一般的な教育もサドベリーも入っているだけだ。
②制度:次に制度を整えていく必要がある。古代ギリシアでは女性と奴隷に参政権はなかった。しかし長い年月を経て現代は奴隷がなくなりまた全ての人の参政権が制度により可能となった。私は法律を作る活動の共同発起人もしていて、『教育機会確保法』をつくる活動も参画していたが、もっと子どもが教育をフラットに選べるよう制度を整える必要がある。子どもも自分の人生を選択ができる権利のための制度が必要だ。
③意識:そしてやはり、市民の意識が少しずつでも変わっていく必要もある。人類は常に、意識変容を経験してきた。それは悲劇により変容を突き付けられる形で、またより良い社会創造のために自ら変わっていく形で。私たちは子どもは自ら変わっていく力があると知っている。そして当然大人にもその力はある。まずは大人が変わる、変われる。そのことを信じている。
私はこれら3つの全てがいつか揃う日が来ると思うし、自由と民主主義の東京サドベリースクールが、その一助になれればとも思う。
大人はしたい仕事やいたい環境を自由に選べる社会になった。子どもが自由に教育や育ち方を選べる社会はいつか。子どもたち一人ひとりが自ら育ち、学び、楽しい子ども時代を送れる。今と100年後の子どもたちのために、それは今から始めなければならない。
その選択肢の1つとして、東京サドベリースクールが最も子どもの自由と民主主義を尊重する学校として残っていきたいと思う。

(スタッフ 杉山)
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自分の可能性を信じたいお子さんにお会いできること、楽しみにしています!
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【オープンデイ】 (毎月週末・親御さんのみも歓迎)
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【親子見学】(毎週火曜・親御さんのみも歓迎)
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【1日学校体験】
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