【スタッフ教育コラム】イルカとネコと、ツバメは違う
以前の学校に通うことに疲れていたお子さん(Aさん)のことを、
ある日の学校見学会に親御さんだけで参加された方が教えてくださいました。
そのお話しから考えたことが、何かしら同じような境遇のご家族のお役に立てるのではと考えたため、
内容を控えながらお伝えできればと思います。
相性という事実
まず最初に、Aさんが通われていた以前の学校を責めるつもりは全くありません。
それはその学校を大好きな子もいるはずだからです。
ではなぜAさんはストレスに感じていたのか。
理由は様々あるでしょう。1つに絞ることも、それが本当の理由なのかも、
さらには言語化できないこともあると思います。
でもその理由の1つとして私たちは、”相性”についてお伝えしたいと思います。
これは、人は年齢に関わらず合わないことや場所、人があるものだからです。
TSSも、ある子にとっては相性が合うし、逆に合わない子もいます。でもそれは自然なことです。
だからある教育の、ある学校が合わなかったとしたら、
それはその子が悪いとか、学校が悪いとか、教育手法が悪いとか単純なことではなく、
要因の1つに相性があるかもしれないと考えてみてほしいのです。
世の中には色々な人がいて、
1人でコツコツ作ることが性に合う職人の方もいれば、たくさんの人に会うことが喜びな営業職の方もいます。
哲学者カントは生涯町の外に出なかったと言われていますが、画家の北斎は生涯で90回以上も引っ越しをしたそうです。
イルカは海が、ネコは陸が、ツバメは空がその力を発揮できる環境ですが、1つずつずれて、
イルカは陸で、ネコは空で、ツバメは海ではそもそも生きられません。
当たり前ですよね。そう、みんな違うから。
だからあることに、合う・合わないは発生するのです。
「さぁ、みんなに公平な試験をするよ」
ではAさんのお話しで、相性が合わないのだから何もしなくてよいのかというと、それも違うと思います。
例えば先ほどの動物の例でいれば、私は現在の
「全ての動物を”公平”という名のもとに、単一の基準で測るような制度」
となっていることに課題があると考えています。
これは下記の有名な絵をもとにお話ししています。
今後は「言語」や「数理」といった、何か1つの基準であらゆる子どもに優劣をつけることはもう終わりにして、
それぞれの強みを活かし、苦手は補い合う方が、健康や幸福、経済にとってすら良い結果になると私は考えています。
そのためには個人や学校や教育がダメなのではなく、制度を変える必要があるのではないでしょうか。
それは私が15年前からお伝えしている、今の一般的な教育とその変化形という意味での多様な教育ではなく
今の教育もあれば、サドベリー教育もあり、シュタイナー教育やモンテッソーリ教育、
レッジョエミリア教育や、IB(インターナショナルバカロレア)らもあって、
それらを本当に自由に選べることこそ、大人の都合ではない子どもまんなか、
子どもの権利を保障する、柱の1つといえるのだと考えています。
道は1つじゃない
今の制度はまるで、
「高校野球ができなければ草野球でもいいですよ。でも他のスポーツは認めませんよ」
と、言っているようなものです。それをスポーツ庁が言ったら非難されてしまうでしょう。
でも文部科学省や政府、そして法律が
「この教育以外は認めませんよ。これ以外の子どもの成長は違法扱いしますよ」
と言っているようなものなのに、疑問を持たれていません。
むしろ”不登校”と、まるで問題がある可哀そうな子のようなレッテルを貼られてさえいます。
憲法では基本的人権の1つに、国家からの自由としてどのような教育を選んでもよいはずの思想の自由や、
むりやり学校に行かなくてもよいはずの身体の自由があるはずなのに。
冒頭のAさんは当時、心身が疲れ切ってしまっていたそうですが、
今は他の教育のスクールで少しずつ元気を取り戻しています。
今18歳以下の皆さんや、親御さんである皆さんのお子さんも、
他にもっと子どもに合う選択肢もあることを知って選んでいただきたいと思います。
そしてそういう制度や社会を共に創っていきたい。
Aさんのように、相性が合わないということで苦しみ続けることのないよう、
他の選択肢もあることを知っていただきたいと思います。
そして同時に、今の学校が合っている方にも、他の選択肢も積極的に知っていただきたい。
なぜなら、「行けるから行く」のと「行きたいから行く」のにはものすごい違いがあるからです。
イルカにはイルカの、ネコにはネコの、ツバメにはツバメの合う環境があるように、
子どもたち1人ひとりにとっても、それぞれの生きやすい環境がきっとあります。
多くの子どもが、子ども時代の1日1日を、楽しく有意義で健康的に過ごせるように、
本当の多様な選択肢の1つであるTSSを、今後も続けていきたいと願っています。
(スタッフ 杉山)