【スタッフ教育コラム】いい子戦略という生存戦略
私たちはどうしても他人の目を気にしてしまいます。それは固定された社会では生きるために重要なことですから、ある程度は仕方がありませんし、ある程度は必要なことです。
そして我々大人が他人の目が気になるように、子どもも他人の目を気にしています。それが形づくられやすいのが家族環境であり、また学校です。
基本的には家族内というのは流動性があまり高くありません。しょっちゅう家族が増減するわけではないし、それほど考え方が大きく変わることもない。そういう環境では家族1人ひとりが何かしらのポジションを自然と作っていきます。
元気なお母さん、寡黙なお父さん、面倒見の良いお姉ちゃん、繊細な弟など。
そこで子どものなかには無意識に、“いい子”でいることで生きていきやすくなる戦略を取る子が出てきます。いい子でいると大人(親)が気に入ってくれてご飯をくれたり、安全な環境や注目をくれます。1つの指標をあげるとすれば、マズローの欲求5段階説の欠乏欲求すべてを満たせます(※)。
また一般的な学校の中では、先生に認められるいい子でいることが上手く生きていく方法でもあります。
その中でも自分の気持ちよりも、他人(先生)が喜ぶことをすること。つまり良い成績を取ることと、クリエイティビティを発揮しないことです。
しかし他人が認めてくれることを先回りし続け、いつもいい子でいつ続けることにもリスクはあります。自分がわからなくなることです。
それは子ども時代にいい子で乗り切った子も、大人になってから顕在化します。自分の気持ちよりも、他人にどうみられるかを優先してきたので、18歳以上の年齢になって、例えば大学で「君はどう思うの?」とか、将来について考える時に「自分は何がしたいのかわからない」となるのです。
これは私自身近い経験をしました。10代の頃から目指していた仕事に就いたのに、それは周りの目を気にして決めていたと気づいたときの愕然として気持ち。そして「本当は何がしたいんだ!」と苦しい想いをしました。
そこらかやっと自分の気持ちを大切にして、今はサドベリーで大好きな子どもたちの成長と自然な姿を見ることができています。
もちろん子ども時代に顕在化する子もいます。
特に親が勉強や習い事をたくさんやらせたくて、子どもは反発反抗せずにやり続け、そしてその子は疲れ果ててしまうようなケースです。
子ども自身が幸せでやる気を出せていなく、やらされるばかりで、本当に本人のしたいことができないのであれば、誰のための人生でしょう。でもそういう子も、そうしている大人も結構多いのです。
じゃあ、いい子をやめて「他人の目なんかカンケーねぇ」と好き放題したらいいかというと、もちろん違う。
人間社会で生きる以上、ある程度他人からどう見られるか、感じ良くいるということも必要なことですよね。
そのため他者からどう見られているのかを、冷静に自分を分析したり、客観視することも大切ですから、子ども時代からそういうこともできるようになれるといいですね。
しかしあまりに気にしすぎてもいけないから難しい。だからそういう環境が大事で、そして挑戦し甲斐のあることでもあると考えています。
教育界には「幸せな子はいいことをするが、いい子が幸せとは限らない」という言葉があります。
18年間という大切な子ども時代を、いい子戦略で自分より他者の気持ちを優先して過ごすのか、自分ならではの幸せのために生き、同時に他者も幸せになれる道を歩むのか。
どう生きるのかは、まさに子ども時代から始まっています。
※人間性の心理学/A.H.マズロー
(スタッフ 杉山)