【スタッフ教育コラム】1つの好奇心から世界が広がる

東京サドベリースクール(TSS)の教育の大きな柱の1つは、子どもが「自分の興味のあることをとことんできる」ことにあります。
しかし、多くの保護者が「1つのことだけに没頭すると視野が狭くなるのでは?」と心配されます。
実際にはその逆で、ひとつの関心を深めることが、むしろ多方面への学びと出会いをもたらしていきます。

TSSに8年間通った同窓生は、音楽が好きで、特に歌が大好きでした。
自然な流れで皆の前で歌いたい、スクールで小さなコンサートを開きたいと考えるようになりました。
もちろん自分でコンサートを開くにはたくさんのことをしなければなりません。
どこで行うかを考え他の生徒やスクールの許可を得るために交渉したり、
どのような歌のリストや順番、そして演奏が必要で誰に協力を仰ぐのか。
またお客さんを呼ぶためにメルマガを書いたり、そこに自らの歌の音源を載せたりと、
試行錯誤で様々な工夫を重ねていったのです。もちろん最初の資金も必要。
それらを1つひとつクリアしてゆきました。
そうして大好きな歌を歌って楽しんでもらいたいというマインドと、自ら動きなんとかする力、
たくさんの方に参加していただき自信をつけた彼女は、TSSを巣立ったのちも歌手として頑張っています。



一方、ある男子生徒は当初、入学するまで思い切りできていなかったということで、ゲームをトコトンしていました。
彼にとって目の前にある欲求を満たした先には、別の出会いが待っていました。
ある本を読み、社会や政治などに興味を持つようになっていったのです。
ちょうどその頃は、安保法案(安全保障関連法)について日本が過熱している時期でした。
彼は日本の安全や、国民が自分の意思を表す選挙の投票率の低さに憂いており、
自分はまだ投票できる年齢ではないけれど、できることは何かと考えていました。
そこで「投票にいこう」という紙をつくり、スクールのコピー機で大量に印刷して大人とともに駅前で投票を呼び掛けるようになっていくのです。
同時に国会議員らと話をしに永田町に行ったり、成田問題や沖縄問題などに関心を寄せ実際に現地に行ってみたりと
様々な行動をし、
自ら政治や自治体などについて学んでいたのです。
彼はその中で、話を聞いたり自分の意見を伝えることや、それぞれの立場で様々な考えがあることを経験していました。
TSSを巣立った後は、自ら高卒認定を受けたり、すでに多くの知識があったにも関わらずやはり大学で学びたいと進学していました。
彼にとっては政治が彼自身を成長させ、また彼自身が育つことで政治の道により進む原動力となっているようでした。


他にも、料理、ゲーム、動画、パソコン、アート、書道、虫取り、お店ごっこ、プラモデル、読書、さらにはのんびりすることまで様々な活動をしています。
それからその経験を経て別の道に進む生徒もいれば、その道にそのまま進む生徒もいます。
結果どちらになるにしろ、本当に今本人が興味のあることに没頭した生徒は、今必要な気づきや楽しみを経験しています。



このような姿は、各界の著名人の歩みにも重なります。

近藤麻理恵さんは「片づけ」という一見家庭的で小さな行為を徹底的に極めました。
やがてその方法論をメソッド化し、書籍となり、日本中へと広がり、
今や世界中の人々の暮らしや価値観を変えるまでの大きな影響を与えています。
小さな「好き」を深めることが、社会全体をより良い方向に動かす原動力になった例ですね。

また、元プロ野球選手の鈴木一郎(イチロー)さんは、少年時代からまさに「野球一筋」で鍛錬を続け、プロとして大成しました。
ひとつの道を極める中で培った深い洞察や生き方への姿勢は、引退後も多くの人々に気づきを与えています。
彼の言葉には、競技を超えて人生全般に通じる学びが込められており、「一点集中が世界を広げる」という真理を体現しています。



また道は様々なれど、1つの道を突き進むなかで「技術だけではだめだ、人を知り、自らも磨かなければ」と、
日々精進され立派な人物になられている方がたくさんいらっしゃいますね。

TSSで生徒たちが「やりたいこと」に没頭する姿勢は、この原則と同じです。自ら選んだ道を深く歩むことが、自然に自己を成長させ、他分野や深い洞察へもつながっていく。
「1つの道から世界が広がる」
その真実を、同窓生の歩みも、有名無名問わず立派な大人も力強く示してくれています。

子どもが「これだ」と思うことに打ち込み、その中で自然に視野を広げていく姿は、大人には時に遠回りに見えるかもしれません。
それがその大人自身の価値観に合わないこともあると思います。
けれども、その子ども自身が選んだ道こそが人生を豊かにし、他のすべてに通じていく扉となりうること。
そして、今ここで熱中しているそのことそのものに尊い価値があることを、
何かに熱中したことのある大人は、わかっていただけるのではないでしょうか。


TSSでは、子どもの好奇心や自由な興味を何よりも尊重し、その歩みを信じて見守る環境があります。
だからこそ、子どもが自分の道を歩み始める姿がきっと見えてくるはずです。

(スタッフ 杉山)


【安心して自分を育てられる環境を、子どもたちに】
学校説明会(毎月休日開催):次回9月27日(土)
 休日に親子でご参加いただけます。学校説明と共に、生徒にもじっくり質問できます。
親子見学会(毎週火曜日)
 平日に親子でご参加いただけます。学校説明と共に、生徒の普段の様子をご覧いただけます。
1日学校体験
 平日にお子様が1日体験できます。お子様ご自身が実際の雰囲気を感じることができます。

記事の内容に共感いただけましたらフォローをお願いします!