【スタッフ教育コラム】同窓生
時折、同窓生に会う機会がある。
同窓生に会うことも、私の人生の大きな楽しみである。
そのため、誘われたらホイホイと会いに行くし、こちらから声をかけて会いにも行く。
ある男子生徒は現在20代となり、大学生でスポーツを頑張っている。将来的な目標があり、今はそこに向かって突き進んでいるのだ。
激しいプレイにあたり負けない体、うまくいかなくとも切り替えるメンタルから、サドベリーを巣立ったのちの努力が伺える。
そして彼の素敵なところは何といってもその人間性だ。応援に行った試合で、試合の前後はもちろん、プレイの区切りで何度も礼をする。ある日「ご飯しましょう!」と誘ってくれたときにそのことを話したら「意識しているので気づいてもらえて嬉しいです」と言っていた。とはいえ彼は在籍している頃から礼儀正しかったし、くしゃみをすると毎回「お大事に」とも言ってくれる優しさを持っていた。
彼はサドベリーに在籍している時、悩んでいる様子が見て取れた。それは海外からの引越しにより環境変化や、言語的な部分もあったようだ。
と同時に、当時彼の内なるものを解放する作業も重なっていたからだと考えている。“真面目”だったのも少し気になっていた。
でもよく自分で考え内省していた。また少しずつしたいことをして自分に解放の種を植え、育てていたとも思う。在籍期間があまり長くなかったので在籍中はそれらが大きく育つことはなかったかもしれないが、確実にその種や芽吹いたものは残る。そしてそれがサドベリー後に大きく育つことはままある。
だから時間差の問題であって、サドベリー中に何もかもできるようになったり、得られた実感を持たなくてもよいと私は割り切っているところもある。要は生徒の人生が長期的に良いものになることの手助けができればいいのだ。
無意識が意識化されるには時間がかかる。でも時にそれが待てない大人はせっかく本人の顔つきが変わってきても、目に見える能力や大人の望む対象に努力している姿が見えないと「このままでは、、」と焦り、環境を変えようとしてしまう。
彼の親御さんはそのようなことはなかったと思う。そして彼自身がその種を、その後も育ててくれたようで嬉しく思っている。
何より人間性を大事にできたこと、そのパーソナリティがその後も良い出会いを生み育ててくれたようだ。こういうものは生涯にわたって彼を助け、彼も誰かのインスピレーションになる。そんな彼の試合には、私は彼の大学のキャンパスグッズに身を包み、声を枯らして応援している。
彼もつらいことがあったし、今もこれからも大変なことはあるだろう。でも彼の人生は「きっと大丈夫」と胸を張って言える。
また別の女子生徒は、現在10代中盤。最近、今の学校の活動の発表会に誘ってくれた。
2週間かけて高知県を歩きとおして海を目指すという旅を企画し、実行したという。
準備段階から色々苦労したそうだ。一緒に旅をする友人たちや旅中のトラブル。
でも彼女の飄々としつつも実際的なところ、前に進める力が発揮されたようだ。また他のメンバー曰く、精神的な部分でみなの助けにもなっていたそうだ。
彼女は保育園を卒園してすぐに入学し、4年程在籍していたがコロナ禍で電車通学が難しくなり転校した。
6歳の頃からしっかり者という風に見られやすく、実際に聡明なのだけどもちろん無邪気なところもあったし、色々と“しっかり者“の反動もあったかと思う。
今も年齢的には思春期という時代を送っているし、人生の各年代でも、そりゃこれからも色々あると思う。でも彼女もきっと大丈夫だと思う。
理由はこまごま言えばいくらでも出てくる。でもそれはちょっと些末に見えてしまうくらい、「大丈夫」だと思っている。
そう思わせるものが彼女の中にあるし、親御さんも今もそう思っているのではなかろうか。だからこれからもきっと彼女も大丈夫なのだ。

人生の足腰や、自分の核の変容。それは必ずしも楽しいことばかりではない。見たくない闇に光を当てるには準備もいる。
しかしそれを乗り越え、さらには楽しめるだけの土台ができれば、見たくない闇や弱みも、自分をもっと楽しめる伸びしろとして視点を変えることもできる。
この根があれば、自分の興味関心という幹に、枝葉であるその分野の知識や教養を身に付けていけばいい。そうすれば根、幹、枝葉がある樹の自然な流れとして、成果という果実ができてくる。
私でいえば、人間的な部分を両親やたくさんの方々、そして書物に育ててもらった。そして子どもそれぞれの人間性と能力を育てられるサドベリースクールという幹を見つけ、その上に必要な知識や教養である心理学や教育史、コミュニケーションなどの枝葉を学び続けている。その結果、生徒達が自分を見つめ育てられる学校という果実、生徒が自分の人生に向き合い成長してくれた結果を得られている。
もちろん、その幹や果実は生徒それぞれによって違う。
自分のお店を持ち地域の人々に楽しんでもらえる空間をつくることや、大好きな歌でお客さんに喜んでもらうこと、職場の人たちが能力を発揮しやすいような人事担当として働くという幹をつくっている同窓生もいる。サドベリー在籍中、好きでずっとしていたパソコンの関連仕事に就いたり、在籍中に政治活動をしていて大学で政治を学んでいる同窓生もいる。
また幸福そうな同窓生を見ていると、他者を大切にしているという特徴がある。
ハーバード大学が80年以上、幸福について研究しているが、一言でいえば『健康で幸福な人生には、良好な人間関係が欠かせない』と結論づけている。
子は親の鏡というように、基本的に人間関係において他者は鏡なので、敵意を向ければ敵意が、笑顔を向ければ笑顔が帰ってくる。そして鏡は自分が先に笑うことでしか笑みは返ってこない。幸せそうな同窓生たちは、先に笑っているのだとしたら、自分と共に他者を大切にしているのだとしたら、それだけで人生が幸せメモリが増すということだ。
そんな彼らや彼女らは、仕事をしだしてサドベリーのために寄付をしてくれることもあれば、結婚式に招待してくれることもあるくらいで、誰かを応援したり、喜びを分かち合える人になってくれたことが本当に嬉しい。
もちろん果実には、幸福な人間関係の他にも、自己実現や経済的な成功。あるいは健康的な心身という果実もあるだろう。それがどのような形であれ、一人ひとりの同窓生にとっての幸せにつながっていてくれればと思う。
サドベリーを巣立った生徒は多くはない。
でもたとえ少数でも、自分の人生を生き、できる範囲ででも周りの人の幸せになることをしている彼ら、彼女らに私は敬意を表している。
勇気を出して自分を見つめ、行動している彼ら、彼女らに会うたびに、人生に幸あれと思わずにいられない。
(スタッフ 杉山)
【安心して自分を育てられる環境を、子どもたちに】
学校説明会(毎月休日開催):次回9月27日(土)
休日に親子でご参加いただけます。学校説明と共に、生徒にもじっくり質問できます。
親子見学会(毎週火曜日)
平日に親子でご参加いただけます。学校説明と共に、生徒の普段の様子をご覧いただけます。
1日学校体験
平日にお子様が1日体験できます。お子様ご自身が実際の雰囲気を感じることができます。