【スタッフ教育コラム】「何もしない」を深めるために
物があふれる現代では、人は何かを与えること・与えられることに慣れすぎていると言われます。初
もちろん、与える・与えられるの、どちらかだけが良いとも思いません。大切なことを与えられることも大事だし、与えられるからこそという面もあるものです。どちらも自覚的であること、そしてコントロールできていることが必要なのではないでしょうか。
しかし現代では、目に見えるサービスこそが「面倒見の良さ」という評価で測られており、
医療、福祉、教育の現場でも、「何かをしなければ」という強迫めいた衝動が、支える者たちを動かし続けているかもしれません。
ただ、本当に人に寄り添うとはどういうことか、と問うてみると、そこには逆説的な答えも浮かび上がってきます。いつ、どんな時に「何をする」ということと同時に、いつ、どんな時に「何をしない」ということも、それ自体が、深い専門性の結晶だということです。
私は、生徒一人ひとりを知るために、時には写真のような精神医学の入門書や専門書も学びます。なぜか。それは「何かをするため」と同時に、「何をしないでいられるか」を知るためだ、と言ったら、少し驚かれるかもしれません。
たとえば、目の前で誰かが困っていたとする。あるいはその周囲が困っていたとします。そのとき、私たちはどうしても「何か解決策を示さなければ」「注意してわからせなければ」と焦ります。もちろん「どうした?」と声をかける。そこは生徒とスタッフであれ、子どもと大人であれ対等な人間同士ですから、思いやり合うことは大切だと考えています。しかし、その焦りは、相手のためではなく、自分自身の不安を鎮めるためであることも少なくありません。また「これだけのことをしたよ」という誰かへのポーズでもあったりする。
京都大学で教えられていた河合隼雄先生が、長年のユング心理学の実践の中で繰り返し語ったのは、まさにこの点でした。「治療者が何かをしようとする意志が、かえってクライアントの回復を妨げることがある」と。
「何もしない」とは、無関心であることではありません。それは、嵐の中で揺れる船の錨のように、ただそこに在り続けることでもあります。しかし、この「在り続ける」ことの難しさを、経験のない方はわかりづらいかもしれません。自身を訓練してきていない人が「何もしない」でいようとすれば、それは放置になったり、あるいは新年の抱負のように、あっという間に当初の理念は去ってしまうかもしれません。
だからこそ、私たちは様々なことを学ぶことで、より「すること」と「しないこと」の選択肢を増やしていくのです。そのためには、神話からなろう系まで物語を読んだり、古代哲学から先端科学まで学んだり、スタッフも好きなことを追及したり、自分に向き合い自身の良さも弱さも知っていく。生徒に誘われて一緒にゲームをしてバカ騒ぎをすることもあれば、公正とは何かと真面目な話もします。それらすべてから学ぶ姿勢こそが、在り方である。
今回の書籍は精神医学という特異に見える分野についてかもしれませんが、あらゆることが、生徒一人ひとりを知ることにつながっています。

例えば一般的な学校が合わなくてサドベリーに来た子で、いわゆる神経発達症(旧:発達障害)の子もいたりする。そういう子はサドベリーの環境で何も問題がない子もいますし、サドベリーの環境も合わない子もいたりします。どちらにせよ、まず私たちは、彼ら彼女らのその合う合わないに、自分も似たような部分があるかを内省することで、その子との“関係”ができていくのです。それをその子と話すわけではありません。ですが、こちらが心を開き、また「そういうことって、自分だったらこういう面であるよなぁ」と思えるか。相手と線を引いて「なんとかしなきゃ」と自他で分けすぎてしまうと関係が作れません。まさに関係がない、となります。
私たちは医師ではありませんので、医学や知識を学ぶのは、診断を下すためではありません。この人が今どのような内的世界に生きているかを、少しでも理解するためであり、関係をつくっていけるようになるためです。その理解があって初めて、「今は何もしないことをする」という判断が、できるようになっていく。どんな子のどんなタイミングも一律に扱うことは、誰がやっても同じ結果が出る機械の操作マニュアルのようなものです。それではうまくいきませんね。相手も、自分も生き物であり、そこには関係がある、のですから。
日本の文化には、もともと「間(ま)」という感覚があります。音と音の間、言葉と言葉、人と人の間に宿る、あの豊かな沈黙のことですが、私たちのサドベリーの場における「何もしない」とは、この「間」に近いものかもしれません。
知識や経験を自ら増やすことは、この「間」のために、この子と私の間にあるものを少しでも豊かにするために、そして自分という人間を、もう少し深く、もう少し静かに、整えていくことでもあります。そのようにして整えられた者が、ただそこに在る。それでこそできることもあります。
「何もしない」を深めるために、今日も私たちはページをめくっています。
(スタッフ 杉山)
==================================
新たな教育を見て体験して、子どもの選択肢を広げてみませんか?
==================================
【オープンデイ】
サドベリースクールをプチ体験しませんか?生徒の様子をご覧いただいたり、お子様が生徒と一緒に過ごせる時間、学校説明など選べます。親御さんのみも歓迎です。
<休日版>月1週末9:45〜12:30
https://tokyosudbury.com/information-session/
<平日版>毎週火曜日13:00~15:00
https://tokyosudbury.com/tour/

【1日学校体験】
生徒と同じようにサドベリースクールを1日体験できます。
https://tokyosudbury.com/school-experience/

【応援ご寄付のお願い】
子どもと未来の自由・民主主義のために、ご支援お願いいたします。
https://tokyosudbury.com/support/




