【スタッフ教育コラム】答えは自分でつくるもの
私たちは毎日たくさんのことを決めています。ケンブリッジ大学の研究によると、人は1日に最大3万5000回もの決断をしているそうです。
正解とは、あらかじめ決まった答えがあり、それに沿っていれば正解、沿っていなければ不正解となるものです。しかし、生きていると明確な正解があることばかりではありません。むしろ大事なことほど、答えは自分でつくり、その答え合わせも自分でしていくものです。
例えば、「自分がどう生きるのか」「どんな仕事をするか」「自分に合った健康法は何か」「どのくらいの収入が欲しいのか」「この人と結婚するのか」といった個人のことがあります。
また、「子どもの教育」「親の介護」といった家族のこと、会社や組織の方向性、地域社会の未来、さらには環境問題まで、大切なことには答えがないものばかりです。
自分の人生を主体的に生きようとすると、多くの人が「壁」にぶつかります。それは「自分とは誰か」「何がしたいのか」といった問いです。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「汝自身を知れ」という言葉を人生の標語にしていました。
しかし、自分を知ることは簡単ではありません。
東京サドベリースクールでも、「やりたいことがわからない」という生徒がいます。これは「誰かに決められた人生は嫌だ。自分の人生を生きたい」と思った次に現れる、一種の通過儀礼のようなものです。
では、そのような時はどうすればよいのでしょうか。

一つ目の方法は、自分に問いかけ、自分の心の声を聞き、体の感覚を感じながら考えることです。「やってみたい」という気持ちに耳を傾け、その時に体が軽くなるのか重くなるのか、やる気が出るのか出ないのかを感じ取ります。そして理性も使いながら、自分は何に興味を引かれているのかを考え、少しずつ行動してみます。
もう一つは、とにかく小さく動いてみる方法です。様々なことに小さな一歩を踏み出し、その時に出てきた気持ちや感覚を振り返る。そしてまた少しずつ行動してみる。その繰り返しによって、自分なりの答えをつくっていくのです。
答えをつくる方法は一つではありません。山頂に登る道が一つではないように、大切なのは自分なりの道をつくれることです。自分で答えをつくる経験を積んだ人は、多くの選択肢の中から、その時の自分に合った道を選べるようになります。
答えのないことに答えをつくる作業は一生続きます。だからこそ、その経験を子ども時代から積めることが大切です。自分で答えをつくる子どもは、自分で答えをつくれる大人になりやすいからです。
ただ、何かを決めることは大切である一方で大変なことでもあります。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズが毎日同じ服を着ていたのは、決断の回数を減らすためだと言われています。それほど決めることにはエネルギーが必要です。それでも人は、誰かに決められた不自由より、自分で決められる自由を求めてきました。
私たちは、決める力は好奇心と同じように人間に元々備わっているものだと考えています。もちろん子どもにも備わっています。子どもは公園で遊びたい遊具を選び、食べたいものを選び、付き合いたい友達を選びます。大人はその子どもの選択を自分の基準で承認できないだけで、子どもは本来たくさんのことを決めていけるのです。
しかし、子ども時代に決める経験を積まなければ、将来、自分で決めることが苦手になるかもしれません。親子で見学に来られた際、スタッフの質問に先に親御さんが答えてしまうことがあります。そのようなことが続けば、子どもは自分で答えなくなります。
東京サドベリースクールでは、あえて生徒個人の時間の使い方を決めません。本人が決め、本人が責任を取る。決める権利と結果の責任を、生徒自身が経験できるようにしています。
これは放任ではありません。生徒には自分のことを自分で決める力があると信じて任せるのです。放任と任せるの違いは、同じように見えても心を寄せているかどうかにあります。
私たちは生徒に、自分のことも社会のことも、自ら答えをつくれる人になってほしいと願っています。答えをつくる経験は、権利を行使し、その結果に責任を持つことの積み重ねです。それは成長と葛藤の連続ですが、確実に「人生を決める力」を育てます。
ぜひサドベリーを上手に“使い”、自分の答えをつくる経験をたくさん積み重ねてほしいと思っています。
(スタッフ 杉山)
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