written by staff
杉山まさる

ただ今、スクールは夏休みです。
今学期も大きなケガなどなく、今週から生徒は夏休みに入りました。
生徒のいないスクールはとっても静かです。生徒の話し声はもちろん、キッチンから美味しそうな香りもしてきません。

1ヵ月程度の夏休みが終わって、9月からスクールが始まります。
その時はまたちょっとだけ背が伸びて、日焼けした生徒たちの夏の思い出を聞けるのが楽しみです。

さて毎年、この時期ニュースなどで取り上げられるのが、9月1日の子どもの自殺率の高さです。
この日は、1年間で子どもの自殺する人数が最も多い日となっています。

2学期が始まる学校が9月1日に多いので、それを苦に自殺する子どもたちがいるのです。
もちろん、学校だけが要因ではないでしょう。違う理由もあると思います。

しかし、年間で突出してこの日が高いというのは、やはり学校が合わなくて、
でも他の道がなくて行き詰ってしまう子がいる結果だと思います。

もちろん、東京サドベリースクール(TSS)は学校が合わない子のための、不登校のためのスクールではありません。
不登校の子が元気になったら、元居た学校に戻るという考え方ではないのです。

「行けないから、行く」
「行けるから、行く」
のではなく、
「行きたいから、行く」
というスクールです。

より詳しく言うと、
「(今の学校に)行けないから、(TSSに)行く」
「(今の学校に)行けるから、(このまま)行く」
「(TSSなら)行けるから、(TSSに)行く」
「(TSSに)行きたいから、(TSSに)行く」。
もちろん、どんな理由でもいいのですが、最後の「行きたいから、行く」が、より自然な感じがしませんか?

「この仕事がしたいから、この会社に入りたい」
「この人とずっと一緒にいたいから、結婚したい」
「楽しく人生を過ごしたいから、健康でいたい」
というように。

少し短絡的に思われるかもしれません。でも「シンプルイズベスト」という言葉もあります。

つまり、より「自分(この子)に合った学び方、育ち方を選んだら、東京サドベリースクールに行きたいとなった。だから通うことにした」というものです。
それは大人でいうと、より自分がしたい仕事につくための転職のようなもの。

今の時代、転職したからといって責められる人はいません(基本的には)。
自己肯定感を下げる必要もないわけです。
合わない仕事をし続けるより、合う仕事、より自分がしたい仕事で成果を出せた方が自分にも周りの人にもいい。

でも、なぜか子どもの教育だと、たった1つの教育に合わないだけで、
「不登校」という見えないフダを貼られてしまう。
そして実際に周りが気にしていないようでも、本人や親御さんが気にしてしまう”雰囲気”があるのですね。

この雰囲気というのは強力で、特に日本は和や集団の力が強いので、雰囲気の力がすごく強い。
そして、実際に他の選択肢が少ないので、近くに別の道がないように思って、思いつめてしまいます。

15歳以下だけでも日本には1553万人も子どもがいるのに(2018年総務省調べ)、ひとつの教育で皆育つという方が無理があるものです。
本人に合わないことは、本人にも、周りの人にも、また経済や社会にもよくありません。

イチロー選手には野球に関わっていただくのがご本人にも、周りにもいいわけです。そして結果的に経済にも世の中としてもよいわけです。

しかし、「基礎学力」という言葉で、皆がやっている勉強をしていないと人としてだめなんじゃないかと思ったり、学歴がないと生きていけないと言われたりして、
皆怖くなってしまうのですね。

先日、ある高校から、授業の一環で生徒さんが数名見学に来られましたが、
皆さん東京サドベリースクールで「学歴」がなくて生きていけるのか不安だったようです。
でも実際に話したTSSの生徒は、自分よりよく考えているとおっしゃっていました。

もちろん、何事も基礎は大事ですね。
基礎ができていなければ、スポーツでも知識でもなんでも、土台がないので伸びない。
でも、その基礎と言われているもの自体が「本当か?」というのは疑っていいと思います。

「基礎学力というのは本当に万人に必要な内容か?」
「それは自分にとって必要なものか?」
「自分にとっての基礎とはなんだ?」

と問うたとき、自分にとってそれが地元の学校でできると思ったのであれば見学や体験をされるといいと思いますし、
それが東京サドベリースクールでできると思ったのであれば見学や体験をされるといいと思います。

基礎というのは色々な人が色々なことを言うものです。それを「数学」という人もいれば、「自分から動くこと」という人もいます。自分の納得感のあるものを選んでみてください。

もし先の学生のように学歴が気になるのであれば、『高卒認定』を取得すればTSS出身者も高校を卒業したと同じ学力があることを証明されますし、その後大学受験などの資格保有者となります。大学に入学して卒業すれば、大卒にもなるわけです。

高卒認定が欲しいのであれば、1~2年くらい教科の勉強をちゃんとする(やった方がいいかな~位では続かないことが多い)。そして『高卒認定』を取得して、同時にその6歳から18歳までの12年間で、自分のしたいことを探したり、とことんしたいことをすればいいと思います。

高校球児が全員プロ野球選手にならなくてもその経験が無駄にはならないように、
したいことを探したり、とことんやった経験は無駄にはなりません。
サドベリー在籍中にしたいことが見つからなくても、その基礎トレはしているのでその後も諦めず行動し続ければ見つかりやすくもなります。

道がひとつだと思い込んでいると(というか私の学生時代と同じで考えたこともない方がほとんどだと思います)、サドベリーのような他の教育の選択肢があることを知るのは難しいかもしれません。
東京の世田谷区に、こんなスクールがあることも知っていただければと思います。

ちなみに世田谷区は、インターナショナルスクールなどもたくさんありますし、ユニークで個性を発揮して活躍されている大人もいっぱいます。
世田谷区長も教育に見識の広い方ですので、世田谷区が教育を選べる街になったら、他にもどんどん広まっていくと思っています。

今後、子どもたちも大人たちも「僕はサドベリー」「私はインターナショナルスクール」「俺は地元の学校」「わたしはホームエデュケーション」。「僕はシュタイナー」。「みーんなオッケーだよね」となります。そうするのが健康的だし、そうしないと個の力も活かせません。
人口減少と機械化が相まって、個の持っている力を発揮できるようになっていきますし、そうしないと成り立ちにくくなっていくとも思っています。

そういう時代に、遅かれ早かれなっていきます。教育も人生も選べます。
どうぞ自分の可能性の種を、自分でなくさないでください。

樹木にとって最も大切なものは何かと問うたら、それは果実だと誰もが答えるだろう。

しかし実際には種なのだ。

ニーチェ

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