サドベリー教育の中で育った卒業生の、社会での実際の様子はいかがでしたでしょうか。

卒業生を調査し、声を聞くことで、サドベリー・バレー・スクールでは、自分に十分向き合う時間と環境があることが分かりました。そして、そこで生徒たちは自分を見つめ、誰かの指示や強制がない中で主体的に行動しています。
その中でやりたいことのために必要な仲間を集めていきます。具体的な活動を、手探りしながらもそれらに取り組んでいます。

また自分と他人を尊重し、互いの違いを理解しようとしています。サドベリースクールは、コミュニティー(共同体・地域社会)です。皆でスクール(社会)の全てを共有しています。その場を話し合いで創り上げていきます。その中で必ず自分と他人の考え方の違いが見えてきます。だからこそ、とことん話し合ってお互いを理解し合うのです。

それゆえ、自由と自分勝手をはき違えず、コミュニティーという社会を保つことと、個人の権利を調和する必要があるのだということ。コミュニティーを大切にすることで、自分も心地よくその場にいられるということがわかってくるのです。

多くの卒業生は、簡単か難しいかで道を選ぶのではなく、自分がやりたいかやりたくないかで道を選ぶことで、自分らしく幸せで豊かな人生を歩んでいました。

入学することを自分で決め、入学してからもスクールのあらゆることを決める1票の権利があることで、誰かのせいにすることはできません。だからこそ当事者意識や責任感が生まれるのです。それらは、大人になり社会で生きていくなかで大切なことです。もちろん、卒業する時期も、自分で決めています。

他者と比べる必要もありません。“ただ違う”だけです。人に合わせないと仲間はずれになるため人の目を気にするということは必要なく、それぞれが自分の気持ちに素直になり、自分の道を歩めばよいという考えです。
そのため、他人と比べて「自分はできていない。ダメなんだ。」と思う必要もありません。「ただ、できていないだけ。」それだけなのです。事実に感情をのせる必要はありません。自己も他者も否定する必要もありません。

いじめのない学校と言われていますが、サドベリー教育は尊重し合う場であり、伝えること・聞くことを大切にしています。人と人とが関わるので、すれ違いやもめ事はもちろんありますが、話し合い理解し合うために必要なタイミングがきます。また子ども・大人関係なく、“人として”考えるようにしています。

学校説明会でよく頂くご質問の1つに「サドベリーを出て本当に社会で生きていけるの?」というご質問があります。制度の面については、特に学校の籍についての質問を多くいただきます。

サドベリー・バレー・スクールは、現在マサチューセッツ州で学校として認められており、卒業をすると州の卒業証明が出ます。
日本では、サドベリー教育のような多様な教育が学校として認められていないため、学校籍は学区の小学校・中学校の校長先生や教育委員会との話し合いによります。また、学校籍が地域の小学校・中学校に置かれない場合で進学する際や、中学校や高校の卒業認定が必要な際は、中学校卒業程度認定試験高等学校卒業程度認定試験に合格する必要があります。

また、人間性についてはどうでしょう。
このページで卒業生の考え方などに触れてきましたが、サドベリースクールの卒業生が、皆同じような考え方というわけではありません。多くの日本人が同じ教育を受けていますが、多種多様な人がいるのを見れば明らかですね。

しかし、そのようなサドベリー教育のなかで育っている生徒にも共通している項目があります。例えば、「自発性」「コミュニケーション」「信頼感」「自己肯定」「創造性」などです。これらは、1968年から何十年と続くサドベリー・バレー・スクールも、2009年からスタートした東京サドベリースクールも共通しています。

サドベリー・バレー・スクールの生徒達は、学びの形は個人によって違っても、「自分らしさ」を追求し、世の中に表現することを学び、確信出来たときに、卒業を決めています。

冒頭でもご紹介したように、東京サドベリースクールや日本のサドベリースクールでは、まだ卒業生の人数が十分とはいえないため、こちらのページでは世界で最も長くサドベリー教育を行っているサドベリー・バレー・スクールの、“卒業生のその後”にフォーカスしてご紹介してまいりました。

「サドベリーを出て本当に社会で生きていけるの?」という問いの答えは、以下の通りです。

コミュニケーション能力と自発性があり、自分のやりたいことがあって、人間関係を楽しんでいる。そして、幸せを基準にしており、困難にぶつかったときに粘り強さを発揮する人が、社会で生きていけないとは考えづらくないでしょうか。

もちろん、全てが備わっているわけではないでしょうが、このような傾向にあるということは言えそうです。
最後に、ある卒業生のコメントをご紹介しましょう。

今の時点では人生に満足しています。しかし、完全にではなく、まだこれから新しいことに挑戦していきたいとも思っています。

自分らしく、幸せに心豊かに生きていく子どもたちの場所、それがサドベリースクールであると考えています。